国産時計

【セイコー、シチズンetc】これが国産時計のトレンド! 伝統技術を融合した国産時計4選

ここ数年、多くの日本の時計ブランドが日本独自の伝統工芸を取り入れた時計の開発に力を入れている。特に多いのは和の技法で作られた文字盤を使うアプローチで、具体的には和紙、漆、蒔絵、螺鈿、陶磁、琺瑯(ほうろう)、七宝などを文字盤に採用した時計がリリースされている。このほかにもケースに和彫加工を施したり、ストラップに組紐を採用した時計なども見受けられる。セイコーやシチズンといった大手ブランドだけでなく、独立時計師や小規模工房の作品でもこうしたモデルが増えており、世界的に著名な一流職人とコラボした例も少なくない。時計の製造技術が向上して、いままで時計には使いにくかった素材も加工できるようになった点が大きいが、スイスのブランドと差別化を図るという意味でも、今後はさらにこうした動きは加速化されていくだろう。実際のプロダクトを見てみると、落ち着きと侘び寂びを感じさせる風合いが時計の新たな魅力を引き出していて、幅広い層から人気を集めているのもうなずける。

 

シチズン ザ・シチズン AQ4100-06W

■息吹。Ref.AQ4100-06W。スーパーチタニウム(38.3mm径/12.2mm厚)。10気圧防水。クォーツ(光発電エコ・ドライブ)。世界限定250本。38万5000円

時計の文字盤を日本家屋の窓に見立て、文字盤のなかに四季の彩りや陰影を借景のように見出そうとデザインされたザ・シチズンのIconic Nature Collection。春の情景を表現した深みあるグリーンが印象的な“息吹”で採用される文字盤には、日本の伝統工芸である極薄の“土佐典具帖紙(とさてんぐじょうし)”を採用。グラデーションを施した上板に印刷を施し、二重構造にしたことでトーンの変化を楽しめる。ムーヴメントには光発電のエコ・ドライブを採用しているが、発電部の文字盤に和紙を貼っていることを考えると、発電効率を確保するために相当試行錯誤したのではないかと想像できる。外装は軽量かつ硬度の高いスーパーチタニウムを採用しており、文字盤の色味と相まって高級感ある雰囲気。ワニ革のレザーベルトも、環境負荷や安全性を考慮したタンナーによるもので質感は上々だ。

【問い合わせ先】シチズンお客様時計相談室 TEL.0120-78-4807
https://citizen.jp

 

セイコー プレザージュ 有田焼ダイアル 限定モデル

■Ref.SARW061。SS(40.6mm径)。10気圧防水。自動巻き(Cal.6R27)。世界限定2000本(うち国内400本)。22万円

400年以上の歴史を誇り、世界的にも人気の高い磁器“有田焼”を文字盤に採用した限定モデル。ダイアルの製作は老舗の有田焼窯、しん窯に所属する名陶工の橋口博之氏が監修している。白磁独特の柔らかなトーンは、ダイアル本体を特別な技法で立体的に造形し、釉薬で表面を艶やかに仕上げたもので、金属製ダイアルとは明らかに一線を画する。パワーリザーブとスモールセコンドをあしらったやや複雑なダイアルデザインだが、“淡瑠璃染(うするりぞめ)”による濃淡のある表示も実に美しい。ムーヴメントは機械式のCal.6R27を搭載し、スケルトンバックからその動きを確認できる。いわゆるポーセリン(磁器製)ダイアルはアンティークウオッチなどでも見受けられるが、ここまで繊細なトーンを表現した文字盤は珍しい。

【問い合わせ先】セイコーウオッチお客様相談室 TEL.0120-061-012
https://www.seikowatches.com/

 

メーカーズ ウォッチ ノット オートマティック「箔」エディション ATC-40SVPT

■SS(40mm径)。10気圧防水。自動巻き(Cal.NE88)。11万5500円(予約受付中。※ブレスレットは別売り1万7600円)

カスタマイズウオッチの魅力を多くの人に知らしめてきたノットは、日本のクラフトマンシップを世界に発信すべく“MUSUBUプロジェクト”というテーマを掲げ、全国の伝統工芸工房とコラボレートしている。その協業先にはレザー、博多織、畳縁、ジャガード織、デニム、金属加工など様々なジャンルの一流工房が名を連ねるが、この「箔」エディションは金沢の老舗金箔工房、箔一とのコラボによるもの。希少なプラチナを1万分の1という極限の薄さまで伸ばした箔文字盤は、上品で落ち着いた風合いを醸し出している。さらにケースも繊細で美しいザラツ研磨による仕上げが施されており、文字盤の豪華さを引き立てている。10万円少しでこのレベルの外装を備えた機械式時計が手に入るのはかなりお買い得だ。

【問い合わせ先】Maker’s Watch Knot TEL.0800-555-7010
https://knot-designs.com/c/collection/yearslimited2022

 

オシアナス マンタ S5000シリーズ

■Ref.OCW-S5000ME-1AJF。TI(42.3mm径)。10気圧防水。クォーツ(電波ソーラー、モバイルリンク)。世界限定1500本。27万5000円

カシオの誇る高級ライン“オシアナス”のマンタは、薄型のドレッシーなケースを採用している点がポイント。このモデルは文字盤とベゼルに蒔絵による装飾を施している。蒔絵は漆器の表面に漆で絵や文字を描き、乾燥前に金や銀粉を散らして器面に定着させる日本の伝統技法で、今回の文字盤作成には京都の伝統工芸士である下出祐太郎氏に協力を仰いでいる。下出氏自らが手作業で生み出したものゆえ、個体ごとに表情が異なる点がポイント。チタン外装のシックな雰囲気をより強調するような見事な加工で、肝心の中味もBluetooth経由のモバイルリンクによる時刻修正を筆頭に、ワールドタイマー、タフソーラーなどの充実した機能を網羅している。日本が誇る伝統と先進性をフュージョンさせた魅力的なモデルだ。

【問い合わせ先】カシオ計算機 お客様相談室 TEL:03-5334-4869
https://oceanus.casio.jp

 

構成◎堀内大輔(編集部)/文◎巽 英俊

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