意外と知らない時計知識

Q22.アンティークウオッチに採用されている、スネイルタキメーターとは何か?

A.ベゼル表示のタキメーターでは計測できない、遅い時速(60km以下)の計測ができるスケール

 前回(Q21)は、1km移動するのに要した時間を計測し、その区間の平均時速を割り出せる“タキメーター”について紹介した。今回は同じスケールの種類のひとつである、通称“スネイルタキメーター”についてお届けする。
 スネイルタキメーターは文字盤中央にある渦巻き状のスケールのこと。カタツムリのような見た目からこう呼ばれるようになった(エスカルゴラインとも呼ばれる)。1940年代のクロノグラフウオッチにおいてはよく散見される。
 現在もごくわずかに、デザイン的に古典的な雰囲気を強調したい場合に採用されたりする。

 文字盤外周やベゼルに設けられた一般的なタキメーターでは、60km以下の速度を計測できない。そこでタキメーターを文字盤中央に設けることで低速域を表示、時速60km未満の速度も計測できるようにしたのがスネイルタキメーターである。
 使い方はタキメーターと同様。計測開始と同時にクロノグラフをスタートさせ、次に1kmの地点でストップさせる。時速60km以下の計測の場合、クロノグラフ秒針が2〜3周するため、その際に指し示していた数値となる。

文字盤中央に、ゴールドで配されているのがスネイルタキメーター。1本の線がカタツムリや巻貝のようになっているためエスカルゴラインとも呼ばれる。ちなみにこの写真の場合の速度の目安は、クロノグラフ針が1周目であれば時速100km、2周目であれば時速37.5km、3周目であれば時速23kmとなる

 ちなみにこれで初めて特許を得たのは、1907年のF.アメ=ドロー(スイス特許39276)。だが、少なくとも1890年代には、スネイルタキメーターの原型があったことが確認されている。

 

文◎松本由紀(編集部)

 

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