2020年、巨匠としての技術力を改めて証明する魅力的なコンプリケーションを相次いで発表したパテック フィリップ。今年もまもなく終えようとしているいま、改めて同社が発表した大作4モデルを前回に続いて紹介したい。
Complication 03|Perpetual Calendar, Chronograph
永久カレンダー搭載クロノグラフ 5270
パテック フィリップを代表するモデルのひとつであるRef.5270で初となるイエローゴールド仕様。素材こそ異なるものの、凹型のベゼルと段差の付いたラグを備えた立体的なケースデザインや、各表示がバランスよくレイアウトされた緻密な文字盤デザインは従来モデルに同じ。時代を超越したエレガントな雰囲気を備える。
■K18YGケース、アリゲーターストラップ。ケース径41mm。3気圧防水。手巻き(Cal.CH 29-535 PS Q)。2025万1000円
現行モデルでは初となるイエローゴールド仕様
パテック フィリップを象徴するモデルはいくつかあるが、そのひとつに永久カレンダー搭載クロノグラフを挙げることに異論はないだろう。
1941年、最初にシリーズ生産された永久カレンダー搭載クロノグラフのRef.1518は、以降、基本的な意匠を踏襲しながら2499、3970へと受け継がれていった。そして今日、この系譜を受け継ぎ現行コレクションとして展開されているのが、完全自社製のムーヴメントを搭載し2011年に登場した5270である。20年は、この5270にイエローゴールド仕様が追加されたのである。
パテック フィリップによる完全自社開発・製造されたCal.CH 29-535に永久カレンダーモジュールを積んだCH 29-535 PS Qを搭載する。1.65mm厚という極めて薄いカレンダー機構が特徴で、全体でも7mm厚。さらにケースを含めても12.4mm厚に抑えられている
本作の登場を待ち望んでいた愛好家は多いに違いない。と言うのも、1518以降、後継機を含めて同モデルではイエローゴールド仕様が主流だったためである。しかし意外にも5270では製造開始から9年もの間、イエローゴールド仕様が展開されてこなかった。ラインナップ全体のバランスを踏まえたものなのか、時代のニーズに合わせたものなのか、その理由は推しはかることしかできない。
ただ、やはり象徴的なモデルだけに“王道”を求める声が以前から多かったことは確かであり、それが9年越しに実現したのだ。もちろん既存のローズゴールド仕様やプラチナ仕様も十二分に魅力的な仕上がりとなっていることは言うまでもない。
しかしながら、時代を超越する美しさと風格を兼ね備えたイエローゴールド仕様特有の佇まいに、改めて圧倒されずにはいられない。
イエローゴールドの植字インデックスとリーフ型針を採用したシルバー・オパーリン文字盤。6時位置にポインターデイトとムーンフェイズ表示が配され、そのスケールの両端に昼夜表示とうるう年表示の小窓をもつ。表示は多いが、均整の取れたレイアウトで視認性は極めて良好である
Complication 04|Split Second Chronograph
スプリット秒針クロノグラフ 5370P
本青七宝文字盤が与えられ、現代的な雰囲気を高めたRef.5370のニューモデル。クロノグラフの操作は2時位置のプッシュボタンでスタート/ストップ、4時位置のプッシュボタンでゼロ復帰、そして3時位置のリューズに統合されたプッシュボタンでスプリット秒針のストップ/再スタートを行う。
■Ptケース、アリゲーターストラップ。ケース径41mm。3気圧防水。手巻き(Cal.CHR 29-535 PS)。3152万6000円
現代的なタッチを加えて生まれ変わったラトラパンテ
スプリット秒針クロノグラフはミニット・リピーター、トゥールビヨンとともに最も製作の困難なコンプリケーションのひとつに数えられ、1923年以来となるパテック フィリップの腕時計コレクションのなかでも特別の地位を与えられている。そして2015年に完全自社製のムーヴメント、キャリバーCHR 29-535 PSを搭載した最初のスプリット秒針クロノグラフとして登場したのがRef.5370だ。1940年代のタイムピースを彷彿とさせるクラシックな2カウンターのスタイルに、光沢をもつ黒七宝文字盤を組み合わせた意匠は、とりわけオールドファンからの大きな支持を得た。
2020年、この5370が本青七宝文字盤を新たに与えられ、現代的な雰囲気をまとって生まれ変わった。さらに文字盤に合わせてストラップは同系のブリリアント・ナイトブルーカラーだ。色彩感覚としては現代のニーズにマッチさせているが、これが伝統的なスタイリングと意外に合う。従来の黒七宝文字盤仕様とはまた違った魅力が味わえる仕上がりとなっているのだ。
釉薬特有の揺らぎがあることからクオリティをコントロールすることが極めて難しいと言われるブラックエナメル。パテック フィリップで黒七宝と呼ぶ文字盤はエナメルでありながら、表面は極めて平滑でかつ美しい光沢をもった高い完成度を誇る。ニューモデルで採用されるのは、このバリエーションとなる本青七宝文字盤だ
搭載しているのは従来に同じCHR 29-535 PSである。本機は、分積算計カムに弧状の切り欠き部を設けることでゼロ復帰(リセット) 時におけるショックを減少させ、クロノグラフ秒針の振れを軽減させる特許技術や、30分積算計に瞬時運針式を採用するなど、革新的な技術を盛り込み、クロノグラフムーヴメントとして極めて高い完成度を実現している。
6件の特許技術が加えられた完全自社ムーヴメントのCal.CHR 29-535 PS。シースルーバックからは複雑なメカニズムが織りなす造形美に加え、ハンドクラフトによる繊細な装飾美が同時に楽しめる。なおクロノグラフ非作動時におけるパワーリザーブは最小65時間となっている
文◎堀内大輔(編集部)
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