現在、クラウドファンディング「ウオッチメーカーズ」で先行予約を実施しているアウトラインの最新作“パイロットクロノ20thリミテッド”が、おかげさまで260本以上という数多くのお申し込みをいただいている。ますはこの場をお借りしてお礼申し上げたい。そしてクラウドファンディングも3月21日(月)までとなった。2万円台という特別価格はこのクラファンだけのチャンス。ぜひご利用いただけたら幸いである(※クラウドファンディングは終了しました)。
さて、この新作パイロットクロノ20thリミテッドだが、SEIKOのメカクォーツを搭載した古典的デザインの二つ目クロノグラフながら、文字盤外周に世界23の都市名を表示し、その中から知りたい都市の時刻も同時に確認できるという点もこの価格帯の時計にはない(たぶん)大きな特徴となっている。
アウトラインのパイロットクロノ20thリミテッド。ベゼルの赤い「12」を任意の都市名の位置に移動するだけで、その選択した都市の時刻も同時に確認できる。SEIKOメカクォーツ搭載。3万7400円
これは同じく世界23都市の名前が外周に設けられた1940年代のクロノグラフの名機“フライグオフィサー”から着想を得たものである。当時はパイロットが国をまたいで飛行中に都市と都市との時差を確認することを目的として開発されたようなのだが、おそらくは都市名が表示されているためだろう、フライングオフィサーのことを、よく“世界初のワールドタイマー”として紹介していることが多い。ただ捉え方の問題かもしれないが、意味合い的にはちょっと違うような気がする。そこでこのワールドタイマーとはどのような時計を指すのかを簡単に整理してみたいと思う。
ワールドタイマーの代名詞的な存在のパテック フィリップのワールドタイム(このモデルはフライバッククロノグラフ仕様)。ワールドタイム機能は時針、24時間表記のアワーリング、外周の都市名がすべて連動して動くため、10時位置のボタンを操作して知りたい都市名を12時位置に移動するだけですべてセットできてしまう。ちなみに各都市の時刻は都市名近くのアワーリング上の数字から読み取れる
ワールドタイマーは、その呼称自体は暫定的な呼び名で厳密な定義はないと言うのが正直なところ。だからと言って二つ以上のタイムゾーンが表示できるからと何でもワールドタイマーというのはいささか乱暴すぎる。そこで筆者は多くの都市名が文字盤上に表示されていて、そのすべての都市の時刻を同時に確認できるものをワールドタイマー、そうじゃないものをGMT(UTCを含む)ウオッチあるいはデュアルタイムと区別して表現しているのだ。
そのためこの考え方に当てはめると、ジャガー・ルクルトのマスター・コントロール・ジオグラフィーク(下の写真)も世界24都市の名前が表示されたインジケーターを備えるが、それらの都市すべての時刻を同時にひと目で確認できるわけではないため、これはデュアルタイムということになる。そしてアウトラインのパイロットクロノ20thリミテッドも、機能こそジオグラフィークと比べ物にならないぐらい原始的な作りだが、これも同じデュアルタイムに含まれるというわけだ。
ジャガー・ルクルトのマスター・コントロール・ジオグラフィーク。6時位置のインダイアルで任意の都市の時刻を表示する。下の窓にある都市名とそのインダイアルの時針とが連動しており、都市名を6時位置にセットすると同時にその都市の時刻となる
なおGMTウオッチ(UTCも含む)はロレックスのGMTマスター II に代表されるように、時分針とは別に設けられた専用の副時針(GMT針と呼ばれる)によって、現在地の時刻と時差のある別の都市の時刻を示すという明確な特徴を備えている。ただGMTウオッチでも必ずしも回転ベゼルがあるわけではなく、専用の針というのは共通だが、時刻を示すスタイルはモデルによっても様々だ。もっとも広義に捉えればこのGMTウオッチも基本機能としてはデュアルタイムのひとつに含まれると思う。