オメガを代表するクロノグラフモデルであり、人類史上初めて月面着陸に成功したアポロ11号ミッションに携行されたことから“ムーンウオッチ”としても有名なスピードマスター。実際に携行されたのは、左右非対称のケースを採用した第4世代にあたるスピードマスターだったが、今回取り上げているのは、それ以前の1962年に登場した第3世代である。
実はこの第3世代こそがNASAによる装備品テストに提出され認定を受けたモデルで、つまりいまでも語り継がれるスピードマスター伝説はここからスタートしたと言っても過言ではないのだ。
■Ref.ST105.003。SS(40㎜径)。手巻き(Cal.321)。1964年製。参考商品
とりわけ、今回の個体はオリジナル性が極めて高い。何とベルト以外は生産時のオリジナルパーツを装備しているのである。例えば、タキメーターベゼル。リペアパーツに交換されてしまっている個体も多いなか、この個体の場合はオリジナルパーツのまま。両者の見た目はほぼ同じだが、タキメーター表示90とそのドットの位置関係を見ると、どちらなのかが判別できる。“ドット・オーバー90”とも呼ばれる、ドットが“90”の斜め上あたりにあるのがオリジナルだ。ちなみにこの仕様が現行モデルでも再現されているため、機会があればチェックしてみてほしい。さらに、リューズの場合はトップに刻印されたΩマークの形状からオリジナルか否かを見分けることが可能である。
ベゼルのタキメーター表示、数字90とそのドットの位置関係でオリジナルかリペアパーツかが判別できる。今回の個体はオリジナルパーツだ
リューズのΩマークに注目。オリジナルリューズは写真のように、Ωマークが楕円形になっている。一方、リペアパーツの場合は、正円に近い形状となる
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文◎堀内大輔(編集部)/写真◎笠井 修