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40年代にロンジン以外にオメガやジャガー・ルクルトなども製造した軍用時計を日本製機械式ながら5万円で再現!【OUTLINEニュース no.32】

 7月中旬発売予定の新作として先頃発表させていただいた“アウトライン・セコンドセッティング”。その製作にあたってデザインのベースになったモデルは、いまから100年ぐらい前に開発された歴史的なモデルの第2世代で、軍用時計としても知られるパイロットウオッチである。ただそのモデルについてはおそらくアンティークウオッチの愛好家の方以外はほとんど知られていないと思われるため、ちょっとその時計について取り上げてみたい。

ウィームスウオッチと呼ばれる歴史的モデルの第2世代から着想を得て開発した“アウトライン・セコンドセッティング”。ケースサイズは着けやすさを考慮して38mm径と程よいサイズに仕上げている

 腕時計はそもそも2度の世界大戦が技術的な進化を加速させたと言われる。とりわけ1939年に起こった第2次世界大戦からは、戦闘機や爆撃機といった航空機が結果を大きく左右するほど戦術的に重要な位置づけとなっていた。そのため航空機のパイロット向けとしてクロノグラフウオッチに対する需要が増したこともあって、その実用性に加えてクロノグラフ機構を備えたムーヴメント自体の性能も飛躍的に進化したと言われている。

 アウトラインのセコンドセッティングは、そんなクロノグラフ機構は備えていないものの、1920年代に航空機のパイロット向けに誕生した歴史的な腕時計がベースだ。そのモデルとは通称“ウィームス・セコンドセッティングウオッチ”と呼ばれており、20年代に航空航法の第一人者であったアメリカ海軍のP.V.Hウィームス大佐によって生み出されたことから、“ウィームスウオッチ”とも呼ばれるものである。

ロンジンの生み出した初代ウィームス・セコンドセッティングウオッチ。秒目盛りが付いた文字盤中央のディスクで秒をセットする

 ではなぜこのウィームスウオッチが歴史的なモデルなのかというと、いまから100年近く前といえど、当時の航空機は時速数百キロメートルで飛行するため、1秒の違いで距離に大きな誤差が生じてしまう。そのため秒単位まで正確に計測することがより重要になってきていた。

 ただ20年代といえばクロノグラフ機構を備えた腕時計自体はすでに存在していたものの、まだまだ開発途上(実用として完成度を増したのは30年代中頃)にあった時代。しかしながら当時の3針時計で時計の動きを止めずに秒針を合わせることは不可能だった。

 そこでウィームス大佐は「秒針で調整するのではなく、秒目盛り自体を動かす」という逆転の発想から航空士のための計時方法を考案。当時としてはかなり画期的だったのである。そしてそれを時計メーカーのロンジンが1929年にパイロット向けの腕時計として具現化した。

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