日本未上陸のためご存じの人は少ないかと思うが、パーネルは高度なトゥールビヨンモデルを製作し、名を馳せるスイスの気鋭ブランドだ。初参加となった2020年に続き、今年もウォッチズ&ワンダーズに参加し、大作“エスケープⅡ”のニューバージョンを発表した。
新作を取り上げる前に、まずはエスケープⅡがどういったモデルなのか簡単に紹介しよう。
同モデルは世界最速の3軸トゥールビヨンを、二つも備えた超複雑モデルだ。発明したのは過去にMB&Fともコラボレートしたことでも知られる時計師のエリック・クードレイ氏で、この機構を“スフェリオン”と名付けた。
一般的な1軸のトゥールビヨンの場合、1回転するのに60秒掛かるが、このスフェリオンでは軸によって回転速度が異なり、8、16、30秒でそれぞれが1回転する。回転速度を上げることで重力の影響を最小化、かつ多方向に回転することで影響を分散させるという発想だ。
スフェリオンがひとつだけのモデルがエスケープとして展開されており、その上位機種にあたるのがエスケープⅡである。こちらはスフェリオンを二つ備え、さらにこれらを繋ぐことで誤差を平均化している。
スフェリオンをひとつ備えたエスケープ
スフェリオンを二つ備えるエスケープⅡ
もっとも、この大掛かりな機構を動作させるためには、多くのエネルギーが必要となる。そのためエスケープⅡでは動力源となる主ゼンマイが六つ(四つの香箱に収められる)もあるのだが、それでもパワーリザーブはわずか32時間しかない。
エスケープⅡ アブソリュート・サファイア
サファイア(48mm径)。3気圧防水。手巻き(Cal.CP03/32時間パワーリザーブ)
今年発表されたエスケープⅡのニューバージョンは内部の複雑なムーヴメントが全方向から鑑賞できるフルサファイア仕様だ。しかもケースのみならず、文字盤やブリッジ、一部の歯車もサファイアで成形し、“純粋な透明性”を追求したというユニークピースで、スフェリオンの機能美と造形美がより強調されている。サイドから見ると、まるでスフィリオンがまるで中空に浮いているかのようだ。
さて、これだけ複雑で豪華なモデルだと価格も気になるところだが、ユニークピースゆえに時価扱い。ただ、あくまでも目安となるが、海外情報サイトでは100万ドル(!)と伝えているところもある。
【本国サイト】
文◎堀内大輔