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【話題の国産ウオッチを本音レビュー|Vol.10】セイコー プレザージュ シャープエッジドシリーズ GMT

 2011年に発売開始されたセイコーのプレザージュは、日本特有のデザインを全面に押し出したラインとして人気が高いが、そこに新たなデザインシリーズとして登場したのが“Sharp Edged Series”だ。
 5月に登場する同シリーズの最新作は、GMT機能を搭載し、プレザージュとしては初となるスポーティブなモデル。基本コンセプトは、華美な装飾をそぎ落として本質を表現する洗練された日本独自の美学ということで、文字通りエッジを効かせたデザインで端正な美しさを生み出している。

■Ref.SARF005。SS(42.2mm径、13.7mm厚)。10気圧防水。自動巻き(Cal.6R64)。15万9500円(2021年5月発売予定)

 まず時計本体を持ってみたところ、ずっしりとした重厚感があり、それでいて腕に吸い付くような着け心地は悪くない。ケースは鏡面とヘアラインを組み合わせており、それぞれの使い分けの巧みさはさすがセイコーといった感じだ。ケース自体のデザインはシンプルなラウンド型だが、ラグ部分の平面の使い方が上手で、鏡面とヘアラインのコンビネーションで立体感を生み出している。特にエッジのシャープさは際立っており、落ち着いたテイストの中にスポーティブな雰囲気をうまく加味している。またこのケースの輝きをキープするために、セイコー独自の表面加工“ダイヤシールド”が施されているのも大きなアドバンテージとなるだろう。組み合わされた3連ブレスもしっかりしたつくりで、耐久性はかなり高そうだ。

 文字盤には細かい彫り加工が施されているが、これは日本古来の伝統的な文様である麻の葉をモチーフにしたもの。厚さ0.4mmの金属板にわずかな高低差を付ける繊細な加工によって紋様が生み出されており、デザイン的な美しさだけでなく、光を乱反射させることで視認性を高める意味合いもある。
 文字盤と針の配置も立体感をうまく生み出しているし、42.2mmというサイズ感もほど良い。文字盤には通常の3針+GMT針のほか、パワーリザーブ表示も搭載されているが、上品にまとまっているので文字盤上がごちゃついた感じはない。文字盤の色味は日本の伝統色である墨色を採用しており、ブラックよりも深みのあるグレーっぽいトーンを生み出している。微妙なトーンの違いだが実に大人っぽい色調で、ダークスーツなどに合わせるとよりその個性が引き立ちそうだ。
 ちなみにカラーバリエーションモデルも藍鉄、常盤といった日本の伝統色が用いられており、さらにセイコーブティック限定色として檜皮色もラインナップされている。いずれもいままでの時計にはあまり用いられなかった和の色味で、静謐かつ現代的なこの時計のデザインをよく引き立てている。

 ムーヴメントはプレザージュでよく使われている6R系のなかでも、GMT対応の6R64を搭載している。6R系は耐震構造“ダイヤショック”、巻き上げ効率の高い“マジックレバー”、耐久性の高いゼンマイ用合金“スプロン”という三つの特徴をもった“トライマチック”ムーヴメントとしてよく知られる。裏ブタはシースルー仕様でこのムーヴメントの動きが楽しめる点もうれしい。パワーリザーブは約45時間、そしてデザイン的なアクセントにもなっている赤いGMT針は単独調整が可能だ。
 かなり引き締まった真面目な顔つきで、国産時計の美点を上手にアピールした大人っぽいモデルだ。それでいてGMT、パワーリザーブなどのスポーティブな味付けが、デザイン的にも機能的にもよく効いている。第一線で活躍するビジネスマンがオン・オフ問わずに使うにふさわしいモデルと言えるだろう。10万円台半ばという価格帯は非常にコストパフォーマンスが高く、機械式時計の入門用としても打ってつけだ。

 

構成◎堀内大輔(編集部)/文◎巽 英俊/写真◎編集部

 

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