いまや当たり前の存在となった自動巻きクロノグラフ。
現在、機械式クロノグラフは自動巻きクロノグラフのほぼ同義語になったが、完成したのは1969年で、普及したのは80年代以降のことだ。
つまり、機械式ムーヴメントが搭載した機構のなかでは、比較的新しいものと言える。
また自動巻きクロノの黎明期は、腕時計デザインも非常に個性豊かな時代で、いまとは違った面白さがある。
そこで今回は、当時のトレンドもあってデザインにも個性がある、魅力的なアンティーク自動巻きクロノを厳選して紹介しよう。
》ブライトリング
クロノマット クロノマチック
1942年に回転計算尺付きクロノグラフとして登場したクロノマットも70年代になると自動巻きムーヴメントが搭載された。
これに伴い、ケースは40mmに大型化しているが、一方で緻密なスケールが記された凝縮感ある文字盤デザインは健在だ。同社のほかホイヤーら4社合同で開発したクロノマチックのCal.12が搭載されている。
■Ref.8808.3。SS(40mm径)。自動巻き(Cal.12)。1970年代製。参考価格70万円
》ホイヤー
オウタヴィア クロノマチック
近年アンティーク市場で人気が高まったホイヤーのオウタヴィア。モデル名は自動車(Automobile)と航空(Aviation)からなる造語であることは有名だ。
ケースフォルム、ベゼルのスケール、文字盤のデザインが異なる多様なバリエーションが展開されており、いまも人気が高い。
■Ref.11630。SS(42.5mm径)。自動巻き(Cal.12)。1970年代製。参考価格60万円
》ホイヤー
オウタヴィア クロノマチック
こちらのオウタヴィアは、時計メーカーと初めてスポンサー契約を交わした伝説のF1ドライバー、ジョー・シフェールが着用していたことでも知られるRef.1163のホワイト文字盤仕様。差し色のブルーとホワイト文字盤のコンビネーションでクールな印象に仕上げている。この個体では希少な当時のブレスレットも付属するため、相場は跳ね上がる。
■Ref.1163。SS(41mm径)。自動巻き(Cal.11)。1970年代製。参考価格200万円
》モバード
エル・プリメロ クロノグラフ
後にロレックスがデイトナのベースキャリバーとして採用したことでも知られる自動巻くクロノグラフムーヴメント、エル・プリメロ。これを開発したのがゼニスとモバードだ。
このモデルは“TVスクリーン”とも呼ばれるスクエアケースを採用したモバードのエル・プリメロ搭載機で、ゼニス名で展開されるTVスクリーンモデルとともに希少種として知られる。
■SS(39.5mmサイズ)。自動巻き(Cal.3019 PHC)。1970年代製。参考価格60万円
》チューダー
クロノタイム モンテカルロ
チューダーのクロノグラフは1976年初出の第3世代から自動巻きムーヴメントのCal.Valjoux(ETA)7750が搭載された。
自動巻き化に伴い、2カウンターから3カウンター仕様になるなど変更点もあるが、このRef.9430/0のように“モンテカルロ”と呼ばれる独特なデザインが踏襲されたバリエーションも展開された。
■Ref.9430/0。SS(40mm径)。自動巻き(Cal.7750)。1970年代製。参考価格170万円
文◎堀内大輔(編集部)/写真◎笠井 修