ドイツ時計

【いま注目すべき独立時計師】手作業を貫く孤高の独立時計師、ステファン・クドケの仕事

 卓越した彫金技術から生み出される美麗なスケルトンウオッチを得意とするドイツの独立時計師ステファン・クドケ氏が、自身の名を冠したブランドを立ち上げたのは2007年のことだ。
 “個人のための時計こそが真のラグジュアリー”という理念を掲げる同氏は、デザインからパーツの切り出し、彫金、ムーヴメントの組み上げに至るまでのほぼ全工程をひとりで行う。そのため生産量は年間70本ほどに限られるが、出来栄えは美術工芸品と言える趣で、多くの時計愛好家を虜にしてきた。

台座に置いたムーヴメントのパーツに彫金を施す様子。緻密な作業のためマイクロスコープを使って、丁寧に仕上げていく。クドケ氏の真骨頂が発揮される工程のひとつだ

 

 そして18年には初となる自社製手巻きムーヴメント、カリバー1を完成。19世紀の懐中時計からインスピレーションを得たという独創的なレイアウトもさることながら、同時にクドケ氏の彫金師としての高い技術力と審美性が楽しめる仕上がりとなっている。このカリバー1を搭載するのがクドケ1(18年発表)と、クドケ2(19年)だ。

19世紀初頭のイギリス製懐中時計ムーヴメント(写真下)からヒントを得て完成させた初の自社製機(同上)。ユニークなレイアウトもさることながら、キフショック耐震装置やトリオビス緩急調整装置など、随所に高級機らしいディテールを備える

 その高い完成度が評価され、19年に独立時計師協会(AHCI、通称アカデミー)の準会員に選出。さらに21年には、世界でも30名ほどしかいない正会員に認定されたのである。
 いま最も注目されている独立時計師といっても過言ではないクドケ氏の、手作業による温もりを、ぜひ実物で感じてほしい。

〈 クドケ1 〉

2018年に発表された自社製ムーヴメントを搭載する“ハンドヴェルク”コレクションの初作。9時位置に配したスモールセコンドや、ダブルスペードハンドを現代的にアレンジしたインフィニティーハンドなど、往年の懐中時計を彷彿とさせるディテールを盛り込みつつ、シンプルかつ上品な雰囲気にまとめられている。
■SS(39mm径)。5気圧防水。手巻き(Kaliber 1)。110万円


VARIATION

 

〈 クドケ2 〉

Kaliber 1にデイナイト表示を加えたのが、2019年発表のクドケ2だ。12時位置に据えられたデイナイト表示は、球状のディスクにステファン・クドケ氏自身によるエングレーブで仕上げられている。同年のジュネーブ時計グランプリ(GPHG)で、“小さな針賞”を受賞した作品でもあり、一躍その名を世界的に広めた。
■SS(39mm径)。5気圧防水。手巻き(Kaliber 1 in version 24H)。132万円


VARIATION

 

【ムーヴメントの装飾も選べるカスタムオーダーにも対応】

 

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シェルマン日本橋三越 TEL.03-6225-2134
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文◎堀内大輔(編集部)

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