A.ランゲ&ゾーネでは、独自のアウトサイズデイトを永久カレンダーに統合した初めての機械式腕時計としてランゲマティック・パーペチュアルを2001年に発表して以降、同作を含めて7つの永久カレンダーモデルを展開してきた。
そしてこのたび、2021年新作のひとつに、8つ目となる永久カレンダーモデル “ランゲ 1・パーペチュアルカレンダー”を発表した。
本作における大きな特徴は、ランゲ1独自の美しい文字盤デザインのバランスを崩すことなく、永久カレンダー機構を統合したことであろう。
月、曜日、日付け、さらにうるう年表示までを備える永久カレンダーモデルは、大抵にしてその表示の多さゆえ、文字盤が煩雑になりがちだ。もっともその緻密な表情も永久カレンダーモデルの魅力といえるのだが、簡潔なアシンメトリーデザインが特徴となったランゲ1はなじみにくい。
そこで、本作では12年に発表されたランゲ1・トゥールビヨン・パーペチュアルカレンダーで採用された、文字盤外周に配置された12カ月リングによる月表示が取り入れられている。文字盤外周に月表示、10時方向に象徴であるアウトサイズデイト、扇型のインジケーターで曜日表示、そして6時方向に小窓によるうるう年表示が据えられ、ランゲ1の完璧なまでの文字盤バランスを踏襲したのである。
A.ランゲ&ゾーネで67個目となる自社製造キャリバー、L021.3。毎時2万1600振動
この文字盤デザインを実現するにあたって大きな課題は、“いかにして動力を確保するのか”にあった。軽量で小型の48カ月車が毎月7.5度ずつ動くのに対して、12カ月リングではその4倍となる30度を毎月動かす必要がある。加えて、アウトサイズデイトなどほかのカレンダー表示でも瞬転式を採用しているため、伝統的な永久カレンダーモデルよりはるかに多くのエネルギーを要したのだ。
そこでランゲ開発陣は、機械的にエネルギーを蓄積する装置を、内部に二つ組み込むことによってこの課題を解決した。ひとつはアウトサイズデイト表示とレトログラード式曜日表示用の装置、もうひとつは月次リングとうるう年表示用の装置である。
表示を毎日進めるためのエネルギーは、時針および分針の輪列とともに回転する24時車によって蓄積される。24時車の軸にはカムが取り付けられており、バネの力で押しつけられたレバーがこのカムの全周をなぞっていく。そして24時間が経過すると突起の頂点を通過して下降し、カムが瞬時に1単位分回転させるという仕組みである。そのため切替えプロセスによって振幅が低下することはない。つまり、時計の歩度の安定性に影響しないということだ。
もうひとつの月次リングとうるう年表示を進めるための二つ目のエネルギー蓄積装置も切替えのインターバルは異なるが、原理は基本的に同じである。
本作に搭載される自動巻きのCal.L021.3では、さらにデイ・ナイト表示兼用ムーンフェイズ表示が組み込まれていることも特筆に値するだろう。2016年に発表されたランゲ1・ムーンフェイズで初めて採用されたこの兼用ムーンフェイズ表示は、1日の空の変化を表現した天空ディスクによって昼夜の判断も容易にさせた実用機構である。
ランゲ1・デイマティックのキャリバーL021.1をベースに開発されたCal.L021.3では、21金製センターエレメントおよびプラチナ製分銅付きセンターローターを備えた新たな巻上げ機構が採用。複雑機構を与えながらも50時間のパワーリザーブを実現している。
ランゲ 1・パーペチュアルカレンダー
高度なコンプリケーションになるほど文字盤デザインも煩雑になりがちだが、それをここまでシンプルに表現し、完璧なまでのデザインバランスを踏襲した点こそ、ランゲ 1・パーペチュアルカレンダーの凄さなのである。
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A.ランゲ&ゾーネ(https://www.alange-soehne.com/ja/)
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文◎堀内大輔