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【知っておきたい腕時計の基本】うっかり忘れがち。カレンダー表示の操作禁止時間帯

 多くの機械式腕時計の場合、ひさしぶりに着ける際や30日までしかない小の月など、カレンダーの調整を要することがままある。今回は、そんなカレンダー調整時における基本をおさらいしたい。

 デイト表示機構は一般的に、時針車と連動して1日に1回転する日送り車のツメが、デイトディスクの歯と噛み合ってディスクを1日分送る仕組みとなっている。
 これに対して、任意で日付けを調整できる早送り機能も大抵付属しており、その多くがリューズを1段引いた状態で操作することで日付けの数字を送ったりすることができる。もっとも、古い時計ではこの機能がないものが結構あった。この場合、日付けを調整するには1日につき針を丸々1日分回していく必要があり、これだとかなり手間がかかる。
 この手間を考えれば、日付けを容易に早送りできる機能は非常に便利だが、一方で使う際には気をつけなければならないことがある。それが“操作禁止時間帯”だ

ETA社製をはじめ、多くのムーヴメントのデイト表示機構は、上の写真のような構造となっている

 “操作禁止時間帯”とは、ずばり日付けの早送り機能を使ってはダメな時間帯のことだ。
 なぜなら、先述のとおり、多くのデイト表示機構は1日に1回転する日送り車のツメがデイトディスクの歯と噛み合って、ディスクを1日分進める構造となっており、このツメと歯が噛み合っている時間帯に日付けの早送り機能(リューズと連動したデイトディスク修正車でディスクを回転させる)を使ってしまうとパーツに負荷が掛かり、最悪破損にも繋がる可能性があるからだ。ちなみにムーヴメントによっても異なるが、操作禁止時間帯とされるのはだいたい20時から4時の間である。

 これはデイト表示機構がポピュラーになった1950年代以降、構造上のやむを得ない弱点としてあった。
 しかし、時計メーカー各社もこの弱点をいつまでも放置してわけではない。操作禁止時間帯のない、つまりいつでも日付けの早送りができるデイト表示機構が増え始めたのだ。その一例としてはブライトリングが2009年に発表したキャリバーB01や、ロレックスが15年に発表した3200系キャリバーが挙げられる。

2009年にブライトリングが発表したCal.B01(現、01)

ロレックスのキャリバー3235。動力の伝達効率が改善され、パワーリザーブが約72時間に延長されたほか、デイト表示機構に改良が施されており、どの時間帯でも日付けの調整が行うことができるようになった

 ロレックスのキャリバー3235と、一般的なタイプのデイト機構を見比べると、日送り車の形状が大きく異なっているのがおわかりになるだろう。この3235では引き込み式ツメと呼ばれる独特な形状の日送り車が、肝となる。具体的な構造は明らかではないが、操作禁止時間帯、つまり日送り車のツメとデイトディスクの歯が噛み合っている状態でも、ツメに掛かる負荷を逃がす仕組みとなっているのだ。
 操作禁止時間帯があるのとないのでは、当然、後者のほうが実用的であるため、デイト表示付きモデルを購入する際には注目してみるといい。

文◎堀内大輔(編集部)

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