》独創的なテクスチャーにこだわる、シンガポール発の個性派2ブランド
シンガポールは、1965年の建国から56年を経て高所得国へと変貌を遂げ、GDP成長率は世界最高水準に達している。現在では世界で最も住みやすい都市のひとつとしても知られるようになっており、国内外の起業家に有利でビジネスフレンドリーな環境が整えられていることでも有名だ。
数年前、世界銀行が発表したヒューマン・キャピタル・インデックス(人的資本指標)によると、シンガポールは人的資本開発に関して世界で最も優れた国のひとつとされている。政府による教育への投資や国民への支援があり、機敏な労働力と柔軟性を強化し続けており、世界でも屈指の競争力のある国となっているのだ。
今回は、アジアを代表する金融センターのひとつとなったシンガポールの時計に焦点を当て、魅力的なモデルを生み出している二つのマイクロブランドを紹介する。
【ZELOS WATCHES(ゼロス・ウォッチ )】
ゼロス・ウオッチは2014年にエイシャン・タンにより設立された、シンガポール発のマイクロブランド。設立から7年とまだ歴史の浅いブランドだが、年間5000本以上の時計を販売する人気を博している。
創業者のエイシャン・タンが高級時計に触れる機会を得たのが大学時代のこと。高級時計の取引に携わったタンはそのときに、エントリー価格帯や中価格帯の時計に対して、クオリティーやデザインに物足りなさを感じたという。
この経験は、後にゼロス・ウォッチを創設する際にブランドコンセプトに影響を与えており、日本円で10万円台の手頃な価格帯でありながら、一般的には高額な時計でしか見られないような高級素材を使用しているのがゼロス・ウォッチの大きな特徴となっているのだ。
ノヴァ38mm メテオライト
ゼロス・ウォッチを象徴する素材であるメテオライトを文字盤に採用した人気モデル。 文字盤には100万年以上前にスウェーデンに落ちてきたというムオニナルスタ隕石を素材として使用しており、独特の風合いがシンプルな時計にほかにはない個性を加えてている。スイスの高級ブランドでこのような隕石を使った場合、1万ドル以上の高額モデルとなるのが一般的。手の届きやすい1000ドル前後で、個性的な隕石の質感を楽しめるのは魅力的だ。
■SS(38mm径)。100m防水。手巻き(ETA / Peseux 7001)。1049 米ドル(約11万円)
ホライゾンズ200m フィールド グラナイト
グラナイト、ルナフロスト、モスグリーンの3つのユニークなカラーウェイをラインナップするフィールドコレクション。アラビア数字をカットアウトしたサンドイッチ構造の文字盤を採用しており、独特の立体感を備える。このモデルは花崗岩の質感を再現したグラナイト。リアルな花崗岩のテクスチャーが印象的だ。
■SS(39mm径)。200m防水。自動巻き(ミヨタ 9039)。549米ドル(約5万7000円)
》ゼロス・ウォッチ公式サイト
https://zeloswatches.com/
【NEMINUS LAB(ネミネス・ラボ )】
ネミナス・ラボは、2017年にペリー・コー氏によって設立されたマイクロウオッチブランド。ネミナス・ラボの時計の特徴はオートマチックのダイビングに特化しており、一般的なダイバーズウオッチでは見ることができない、ユニークなデザインの時計を求めている時計愛好家をターゲットにしている。
印象的なのが文字盤だろう。逆回転防止ベゼル 、夜光インデックス、1000m防水と、プロユースのダイバーズウオッチをベースにしつつ、独自の製造プロセスにより、クラックが入ったエナメルダイアルの風合いを手頃な価格で再現しているのだ。
創業者のコー氏が“私たちがデザインする文字盤はマスマーケットで見られるものとは異なるものです”と述べているように、幅広いユーザーに受け入れられるデザインではないが、この大胆で独創的なデザインに、興味をそそられる時計好きは多いことだろう。 なお、ネミナス・ラボの時計は、1コレクションにつき最大300本の限定生産をしている。
エクストリームダイバー300
世界中の洞窟ダイバー、ディープダイバー、軍事ダイバーなどのエリートダイバーに敬意を表して作られている1000m防水のオーバースペックダイバーズウオッチ。 過酷な環境にも耐えられるプロダイバー仕様のスペックを備えているが、クラックしたエナメルダイアルからインスピレーションを受けた文字盤など、遊び心を感じさせるデザインがほかのダイバーズウオッチにない個性を主張。手頃な価格帯も魅力となっている。
■SS(44mm径)。300m防水。自動巻き(セイコー NH35A)。699米ドル(約7万3000円)
》ネミネス・ラボ公式サイト
https://www.neminuslab.com/
経済成長が著しいシンガポールでは旺盛な起業家精神に満ち溢れた様々なマイクロウオッチブランドがほかにも誕生している。少し、人とは違う時計を手に入れたいという人は、次の時計を購入する前に、シンガポールのウオッチブランドをチェックしておくことをおすすめしたい。
文◎William Hunnicutt
時計ブランド、アクセサリーブランドの輸入代理店を務めるスフィアブランディング代表。インポーターとして独自のセレクトで、ハマる人にはハマるプロダクトを日本に展開するほか、音楽をテーマにしたアパレルブランド、STEREO8のプロデューサーも務める。家ではネコのゴハン担当でもある。
https://www.instagram.com/spherebranding/