新型コロナウイルスが世界的に猛威を振るうなかでも様々な新作モデルが登場し、2020年も時計愛好家を楽しませてくれた海外の高級腕時計業界。数年来の不況、さらにコロナの影響により一時の勢いは失ってしまったものの、日本市場はいまも高級腕時計ブランドにとって重要なマーケットのひとつであり、数多くの海外ブランドの腕時計が輸入されている。
ただし、日本市場で販売を行っている海外の時計ブランドはごく一部であるのも事実。日本へ上陸を果たしていない魅力的な腕時計ブランドが海外市場にはまだまだ数多く存在しているのだ。ここで取り上げる、“Staudt(スタッド)”もそんな未上陸ブランドのひとつである。
インク印刷技術が生み出す 独特の質感を備えた文字盤
トンサートンコレクション 37mm
37mmの小振りなサイズ感に仕上げたスタッドの新作コレクション。鋳鉄リソグラフィーマシンで仕上げたカラフルなラッカー文字盤を採用することで、クラシックでありつつ、ユニークで現代的なデザインに仕上げられた。全6色をラインナップしており、文字盤の製造に手間がかかるため、それぞれのモデルが100本のみの限定生産となる。
■SSケース、カーフストラップ。ケース径37mm。3気圧防水。自動巻き。限定100本。1395ユーロ(約17万5000円)
スタッドは時計市場としては日本ではあまりなじみのないオランダで2014年に創設されたブランドなのだが、クラシックな3針時計をベースにしつつ、独自のこだわりを反映したコレクションを展開。本国、オランダではBMWとコラボレートを実現するなど、新鋭ブランドとして注目を集めている。
オランダ国内で設計、開発、組み立て(クリスタル風防、ケース、針、ボックスなど、ほとんどの部品をオランダで調達)を行っている点など同社の特徴はいくつかあるが、特筆すべきなのが約100年前に製造された鋳鉄リソグラフィーマシンを採用して作られる文字盤だろう。
定番モデルであるシュタウトブルーの文字盤を例に挙げた場合、適切な色合いを得るために合計12層のリソグラフィ処理が必要となる。手作業で4層のスプレー塗装を施した後、ラッカーで塗装を施した文字盤は4層ごとにオーブンに入れられて硬化処理を施し、最後に特殊なUV処理を施すのだが、この手間のかかる作業により、独特の鮮やかな色合いと、一般的なパッド印刷よりも鮮明で詳細な印字を備えた文字盤が完成するというわけだ。
創業のきっかけとなった1stコレクション
エントリーコレクションであるトンサートンのほか、クラシックなツーカウンター仕様の“プレルディウムクロノグラフ”、ハンドギョーシェを施したモデルなど、多彩なコレクションを展開。写真のモデルは、創業者であるイヴォ・スタッドがイタリアの音楽院で勉強中に孤独から逃れるためにデザインした最初の時計であるプレジウムコレクション。37mmと41mmの2サイズがラインナップされており、リソグラフィーマシンを使用して製作された文字盤に立体的なリーフ針を配し、控えめながら美しいデザインに仕上げられている。
■(左)シュタウトブルーダイアル。(右)アイボリーダイアル。SSケース、アリゲーターストラップ。ケース径37mm。3気圧防水。自動巻き。各2289ユーロ(約28万6000円)
日本未上陸のブランドであるため実機を確認することはできないが、日本でもなじみのあるスイスやドイツの時計ブランドとも異なる独特の色使いや質感が魅力的である。ぜひ、日本でもスタッドの販売が開始されることを期待したい。
文◎堀内大輔(編集部)
【問い合わせ先】
Staudt本国サイト/https://www.staudt-twenthe.com