複雑なメカニズムをもつ機械式腕時計の場合、定期的なオーバーホールが必要だと認識している人は多い。対して、クォーツウオッチの場合はどうか。おそらくオーバーホールは必要ないと考えている人が大半ではないだろうか。
結論から先に言ってしまうと、ズバリ、クォーツウオッチも定期なオーバーホールが必要だ。
では、なぜクォーツでもオーバーホールが必要なのか。今回はこの点について解説したい。
クォーツ時計にはオーバーホールを行う必要がないと誤解される要因のひとつに、機械式ほど構造が複雑ではないという点が挙げられるだろう。実際、クォーツムーヴメントは、機械式に比べて遥かに部品点数が少なく、そして小さいトルクで効率良く輪列を動かしているために歯車などに掛かる負荷も少ない。このことからオーバーホールを要するまでの間隔が長く、なかには10年以上問題なく動き続けるというケースが少なくない。また、比較的安価であり、ファッションとして楽しむという側面もあるため、購入時にもオーバーホールについての説明が十分なされないということも少なからずあるようだ。実際、電池交換さえすれば動き続けると思っていた人は意外と多いのではないだろうか。
しかし、クォーツウオッチもオーバーホールを怠ると機械式腕時計と同様に時間が遅れたり、あるいはクォーツ特有の問題だと電池寿命が短くなってしまうといったトラブルがある。こうしたトラブルは機械式同様、分解、洗浄、組み立て、調整という一連のオーバーホール作業を行うことで、調子を取り戻すことができるのだ。なおオーバーホールのスパンとしては7〜8年(機械式の場合は3〜5年とされる)と言われ、その基本料金は3針モデルの場合、1万円程度(クロノグラフは2万円程度)である。
クォーツムーヴメントのオーバーホールも機械式同様に分解、洗浄が基本となる(写真は機械式ムーヴメントのもの)
オーバーホールに関連して、もうひとつ注意してもらいたいのが、電池切れの状態で放置することだ。
この状態のまま放置すると、電池から液が漏れ出す“液漏れ”が起こる可能性がある。そうなると最悪の場合はムーヴメントの交換が必要(交換用ムーヴメントがない場合もある)となり、思わぬ高額出費となることもあるため注意したい。長く保管しておく際などは、近くの修理店などで電池を外してもらうといいだろう。
機械式であってもクォーツウオッチであっても、長く使いたいのであれば定期的なオーバーホールは必須なのである。
文◎堀内大輔(編集部)