製品情報 話題のトピックス

【10万円台の価格破壊モデルも登場】デイリーユースの“トゥールビヨン”を展開する注目ブランド3選

 機械式時計で最も複雑な機構のひとつに数えられる“トゥールビヨン”。その製作の難しさから、かつてはほんのひと握りの高級メーカーしか製造できない高嶺の花だったが、近年は10万円台から手に入るトゥールビヨンが登場している。

》ミドルレンジで手に入る、デイリーユースのトゥールビヨン

 トゥールビヨンと言えば、機械式時計のなかでも最高峰に位置付けられる複雑機構だ。その製造の難しさから搭載モデルは1000万円以上することも珍しくなく、一般ユーザーにとってまさに高嶺の花であった。

 しかし、近年かつての常識が崩れようとしている。2016年にタグ・ホイヤーがスイス製で100万円台のトゥールビヨンモデルを発表し、大きな話題を集めたが、現在はそれどころではない、なんと10万円台から楽しめるトゥールビヨンモデルも登場している。憧れのトゥールビヨンをデイリーユースとすることも決して夢ではない時代になってきているのだ。

 ではなぜ近年、こうした状況になってきたのか。理由はいくつかある。ひとつは、時計製造においてもCAD(コンピューター支援設計)の導入が進み、かつ工作機器も進化したことで、かつては手作業で作っていた小さなパーツの加工・成形を機械でも行えるようになったことが大きい。

 この製造行程のオートメーション化によって抑えることができる製造コスト(主に人件費)の割合はかなりのものだろう。また、なかにはメモリジンのように、“専業化”することで、より合理的な生産体制を整え、ある程度量産することでコストを削ぎ落としたブランドもある。

 今回は、10万円台〜30万円台という手の届くの価格でトゥールビヨンを展開する注目ブランドを厳選して紹介していこう。


》そもそもトゥールビヨンはどんな機構なの?


 固定され常に同じ姿勢(向き)で使うクロックなどとは異なり、携行する腕時計や懐中時計は、姿勢が一定とは限らない。これはつまり、重力が掛かる方向も一定ではないということだ。この重力が時計の規則性を狂わす原因になると考え、それを解消するためのメカニズムを考案したのが200年以上も前の伝説的な時計師アブラアン-ルイ・ブレゲである。そしてブレゲがこの新しい機構の特許を1801年に取得したという記録が残っている。そのメカニズムは、重力を影響を最も受けやすい脱進機自体をキャリッジに格納し、これを回転させることで、影響を分散・平均化させるというものだ。実はこの基本原理自体は200年以上経った現在も変わっていない。

》そもそもトゥールビヨンはなんで高級なの?


 トゥールビヨン自体の大きさを考えればわかりとおり、構成するパーツ一つひとつもかなり小さい。こうした小さいパーツを高い加工精度で作り上げるのが、どれほど難しいかは容易に想像できるだろう。しかもこうした小さなパーツを組み上げ調整するのも、熟練の技術が必要となる。当然ながらトゥールビヨンを組み立てることができる優れた時計師も限られ、それなりの時間も要するために、生産数も少ない。こうした理由からトゥールビヨンのコストは押し上げられ、高額になるのだ。


》編集部のおすすめモデル-1
MEMORIGIN(メモリジン)
ナビゲーター

 普及トゥールビヨンのパイオニアと言えるのがメモリジンだ。同社はいち早くトゥールビヨンの低価格化に取り組み、憧れの複雑機構をより身近な存在にした立役者と言える。価格を抑えられた理由としては、“自社生産すること”と“ラインナップを絞り専業としたこと”が大きい。上のナビゲーターは、香箱を二つ搭載することで駆動時間を延長。従来モデルの倍となる80時間のロングパワーリザーブを実現したモデルだ。文字盤にはトゥールビヨンを中心として、左右にパワーリザーブ表示とデイナイト表示を備える。

■Ref.4894379070414。SS(43mm径)。5気圧防水。手巻き。36万3000円


 ムーヴメントは文字盤側だけでなく、裏ブタ側にも細かな装飾が施されている。ブルーネジや石が華やかな印象をプラスしており、かなり見応えがある仕上がりだ。

(左)オースピシャス
(右)エバーラスティング
 メモリジンではトゥールビヨンモデルのみの展開だが、スケルトン仕様のオースピシャスやクラシックな雰囲気のエバーラスティングなど、ラインナップは豊富にある。いずれもトゥールビヨンの造形美を際立てるデザインが特徴だ。

■共にSS(43mm径)。5気圧防水。手巻き。(左)Ref. 4894379050218、36万3000円。 (右)Ref. 4894379020518、35万2000円

【問い合わせ先】
アイメックスワールド
TEL:06-6460-3000
メモリジン公式サイト
https://memorigin.jp


》編集部のおすすめモデル-2
THE ARCEHR(ジ・アーチャー)
ゼロ トゥールビヨン ティーワン

 “誰でも気軽に楽しめる時計をゼロから再定義する”をコンセプトに掲げるゼロタイムが新たに生み出したモデルが、“トゥールビヨン ”だ。そのメカニズムの全貌を余すことなく味わってもらいたいという思いから、文字盤だけでなくムーヴメント自体も肉抜きしてスケルトン化。さらに全方向から堪能できるよう、ケースサイドもシースルー化させてしまったのである。側面からも光が入ることで見せる、芸術的な造形美は必見である。

■Ref.ZT001SBK。SS×高硬度・高透明度強化アクリル(43 mm径)。3気圧防水。手巻き(Cal.ZEROO T1)。限定100本。25万8000円(予価)


 機械式ムーヴメントの動力源となる主ゼンマイが納められた香箱もスケルトン化。ツインバレルとすることで、約70時間のロングパワーリザーブを実現した。

【問い合わせ先】
ゼロタイム
TEL:050-3656-4608
ゼロタイム公式サイト
https://zerootime.com


》編集部のおすすめモデル-3
LENVINO(レンビーノ)
トゥール02

 アメリカのクラウドファンディングで7000万円以上の支援を集め、話題となった香港の新鋭ブランド、レンビーノから登場したトゥールビヨンウオッチ。トゥールビヨン以外の付加機能はなく、シンプルなデザインだが、特筆は約13万円と驚くべき低価格化を実現している点だ。まさに普段使いトゥールビヨンの筆頭に挙げられるモデルのひとつだろう。文字盤にサンドブラスト加工を施すほか、時分針を肉抜きするなど、あくまでトゥールビヨンを主役としたデザインだ。

■SS(43mm径)。30m防水。自動巻き(Cal.TY800)。12万8000円


 トゥール02に搭載されるのはフライングトゥールビヨンと呼ばれるもの。通常のトゥールビヨンとの違いは、ケージを支えるブリッジの有無で、フライングトゥールビヨンにはこれがない。

【問い合わせ先】
マルタス
TEL:03-6281-8736
レンビーノ公式販売サイト

 

文◎船平卓馬(編集部)

-製品情報, 話題のトピックス