ロレックス @kikuchiのいまどきの時計考

【ロレックス】通信 No.070|なぜロレックスは多くの支持を集めるのか?|四つの理由。其の二「品質(堅牢性と耐久性)」

長く使い続けることを基本として
高機能よりも堅牢性と耐久性を重視

 ロレックスが多くの支持を集める理由の二つ目として今回は『高い品質』について取り上げてみたい。

 ロレックスについて時計愛好家のなかにも嫌いだという人はもちろんいる。人間なので好き嫌いがあるのは至極当然のこと。しかし、たとえロレックスを嫌いな人であっても品質についての否定的な意見を聞くことはほとんどない。

 ロレックスは複雑な機能よりも堅牢性と耐久性を常に優先し、長く使うことを前提にこれまでも開発されてきていることは歴代モデルを見ればわかる。つまり、道具としての品質重視という、ある意味ではウオッチメイキングへの考え方がとてもシンプルだからだろう。

 この品質の高さについては、よく定価に対する原価率が高いことを挙げる愛好家は多い。つまり、様々な経費がオンされていないため実質的な品質レベルに対するコストパフォーマンスが非常に高いというわけだ。

 もちろん、これはあくまでも時計愛好家の間で言われていることで、ロレックスが公表(あえて言う内容でもないが)しているわけではないため実際のところはわからない。しかし、細部を見ていくと当たらずといえども遠からず。堅牢性と耐久性など徹底して頑強に作られていることは実機に触れれば容易にわかる。

ロレックスは32年前より品質の高い904Lステンレススチールを採用。ごく最近までこれを採用する時計メーカーは実はロレックスだけだった

 その代表的なもののひとつにケース素材の904Lステンレススチールが挙げられる。904Lスチールとは通常のステンレススチールよりも非常に硬く、そのぶん腐食に強いものの加工には特別な技術を要するほど難しい。そのため素材自体の価格が高いうえに鍛造コストも割高となる。

 最近でこそ加工技術も進歩し、904Lスチールを採用したモデルも他ブランドから出はじめてはいるがその数は極めて少ない。ロレックスはこれを32年も前の1988年から全オイスターコレクションに採用しているのだ。

 これはあくまでひとつの例に過ぎないのだが、「品質」を語るうえで最も重要な点はこのような素材も含めて常に細かな改良が実施されているということだ。現に2010年以前まではかなり頻繁に行われていた。そのため中古市場では仕様違いをレアディテールとして、たとえ同じレファレンスであってもそのモデルを珍重するというロレックス特有の不思議な現象まで生まれたのである。

新作が登場し生産終了となったサブマリーナーデイト、Ref.116610LN。このモデルからベゼルにセラミックが採用され頑強さが増した

 去る9月に2020年新作としてサブマリーナーデイトがリニューアルを果たした。それに伴い今回ディスコンとなった旧型は何と10年間も製造が続けられた。しかしその間というものロレックスは公にしていないが、細やかな改良は度々行われていたのかもしれない。いまやケースまで自社で製造できる時計メーカーは確かに増えてはいるものの、毎年のように改良を続ける時計メーカーは決して多くない。

 このように常に最良を求めて進化を続けるロレックス。定価だけを見ると、ここ10年でかなり上がってしまったことは確かだ。しかしながら、それに見合う、いやもしかしたら品質はそれ以上に向上させているとも言えるだろう。

菊地 吉正 - KIKUCHI Yoshimasa

時計専門誌「パワーウオッチ」を筆頭に「ロービート」、「タイムギア」などの時計雑誌を次々に生み出す。現在、発行人兼総編集長として刊行数は年間20冊以上にのぼる。また、近年では、業界初の時計専門のクラウドファンディングサイト「WATCH Makers」を開設。さらには、アンティークウオッチのテイストを再現した自身の時計ブランド「OUTLINE(アウトライン)」のクリエイティブディレクターとしてオリジナル時計の企画・監修も手がける。

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