レビュー記事 ロレックス @kikuchiのいまどきの時計考

【ロレックス】通信 No.062|意外に知られていない。こっそりサイズアップされたヨットマスターのボーイズモデル!

 今回はヨットマスターについて取り上げてみたい。ただ、王道の40mmタイプではなく、筆者が注目したのは37mm径サイズのヨットマスター37についてだ。

 まず、ヨットマスターとはどんなモデルかについて簡単に触れたい。初出1992年。ロレックスのスポーツ系コレクションは、そのほとんどが60年以上前に誕生したことを考えるとかなりの後発となる。

 名前のとおりコンセプトがヨットオーナー向けに作られたことから、当初はゴールドモデルだけのラインナップだった。いわゆる昨今流行りのラグジュアリースポーツ(近年のそれとはちょっと意味合いが違うが)そのものがコンセプトだったのである。

 このヨットマスターが日本で注目されるようになったのは、99年にヨットマスターのラインナップにステンレスモデルが加わってからである。ヨットマスターロレジウムがそれだ。

 これは、ベゼルのインサートと文字盤にプラチナ素材(ロレックスではこれをロレジウムと呼んだ)が使われていたため、それなりに白っぽい独特の輝きはあったものの、ケースやブレスレットがステンレススチールだったために、見た目にそれほど嫌味がなかったからだろう。2002年暮れに筆者が手がけたパワーウオッチの記事を見返してもロレックスでは人気5位とかなり支持が高かったことがわかる。

 このロレジウム文字盤は残念ながら16年に生産終了となってしまった。その代わりに登場したのが現行で使用されているダークロジウム文字盤である。もちろんベゼルのインサートにはこれまでどおりプラチナが使用されているが、文字盤はプラチナでなくなったことでグッと落ち着いた印象になった。

 さて、本題に入ろう。ヨットマスターはスポーツ系モデルの中でもメンズ、ボーイズ、そしてレディースと3サイズ用意されている点も魅力のひとつなのだが、ディスコンとなったヨットマスターロレジウムのときのボーイズサイズ(ユニセックス)、Ref.168622は35mm径でデイトジャストよりも若干だが小振りだったのである。そのため筆者も然り、恐らくはボーイズサイズに対してほとんどの人は「小さい」という先入観があったのではないか。現に我々メディアでさえも取り上げることはほとんどなかったと思う。

ヨットマスター37。Ref.268622。Ptベゼル、SS(37㎜径)。100m防水。自動巻き(Cal.2236、55時間パワーリザーブ)

 しかし、17年のダークロジウム文字盤の登場とともに、メンズのRef.126622はムーヴメントが同じ(メンズは19年に新型に移行)だったものの、ボーイズのRef.268622についてはCal.2235からシリコン製シロキシ・ヒゲゼンマイを備えた新型のCal.2236に変更。同時にケースもこっそり2mmサイズアップされ、37mm径に変更されていたのである。

 この37mm径というサイズは、旧エクスプローラー I (36mm)よりも1mm大きいサイズ。メンズと言ってもなんら違和感がない数値なのである。しかも細身の人にはジャストフィットなサイズだ。

 現行のロレックスのスポーツモデルはたとえ40mmと言っても以前に比べてかなりラグ部分も肉厚になり、ブレスレットも厚い。そのため実際に着けると数値以上に大きく感じる。特に筆者のように手首の貧弱な者は39mmの現行エクスプローラー I でさえも手首にフィットしない。その点からするとこのヨットマスター37のサイズ感はなかなかいいと感じたのである。

37mmだと細身の筆者でもラグ部分が浮き上がることもなくサイズ感はちょうどいい

 さて、気になる価格だが、国内定価は118万8000円。それに対して並行輸入の新品実勢価格は安値で135万円ぐらい。ユーズドだと110万円ぐらいから流通する。ちなみに40mmのRef.126622は国内定価126万5000円に対して新品実勢価格は安値で160万円。ボーイズもプレミアム価格に変わりはないが、素直に着けて楽しむという点から考えれば、特に細身の人は、サイズ感はもちろん、価格面でも一考の価値ありではないだろうか。

菊地 吉正 - KIKUCHI Yoshimasa

時計専門誌「パワーウオッチ」を筆頭に「ロービート」、「タイムギア」などの時計雑誌を次々に生み出す。現在、発行人兼総編集長として刊行数は年間20冊以上にのぼる。また、近年では、業界初の時計専門のクラウドファンディングサイト「WATCH Makers」を開設。さらには、アンティークウオッチのテイストを再現した自身の時計ブランド「OUTLINE(アウトライン)」のクリエイティブディレクターとしてオリジナル時計の企画・監修も手がける。

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