1990年10月3日の東西ドイツ統一から30年という節目の年となる2020年、実は記念すべきことがもうひとつある。それは1920年、ドイツ人時計師であるアルフレッド・ヘルヴィグ(下の写真)がドイツ・グラスヒュッテにおいてフライング・トゥールビヨンを開発してからちょうど100年目なのだ。
アルフレッド・ヘルヴィグという名前を知らないという人も多いかもしれないが、アドルフ・ランゲの弟子であるモリッツ・グロスマンが1878年に設立したグラスヒュッテドイツ時計学校の技術講師を1913年から務めた人物だ。
アルフレッド・ヘルヴィグと当時彼が開発した回転式歯車時計ことフライング・トゥールビヨンの拡大模型
彼は“回転式歯車時計”と呼んだ片持ち式のトゥールビヨン(写真右側はその拡大模型)を開発。それまで両側にあったブリッジを省くことで、ムーヴメントを薄くした、言わばフライング・トゥールビヨンの生みの親なのである。
トゥールビヨン誕生の地と言えばスイス。しかしながら、そのスイスとは言え当時において体系立てて生産されていたわけではなかったトゥールビヨンを、アルフレッド・ヘルヴィグと教え子たちは早くより体系的に製作に取り組み、かなりの数を生産したと言われている。
ちなみにフライング・トゥールビヨンとは、ガンギ車、アンクル、テンプといった時計の心臓部が収められたキャリッジ(籠)を支えるブリッジが前面に出ていないために、そのキャリッジが1分間に1回転する様子がまさに浮いて見えることからこう呼ばれる。
フライング・トゥールビョンは時計の裏側に設けられている
そして今回、ドイツ・グラスヒュッテに本拠を構えるドイツの高級時計メーカー、グラスヒュッテ・オリジナルでは、この100周年を記念してアニバーサリーモデル“アルフレッド・ヘルヴィグ トゥールビヨン 1920 - リミテッド・エディション”を発表した。
一見するとクラシカルでとても上品かつ控え目なドレスウオッチに思われるが、フライング・トゥールビヨンは実は裏側に付いており時計を裏返すとシースルーバックをとおして現れる。そしてそれは、4分の3プレートに施された美しいリブ模様、ブルースチールネジとそれを止めるゴールドシャトンなど、グラスヒュッテ様式で完璧に仕上げられたムーヴメントとともに堪能できるというわけだ。限定本数は世界でたったの25本とかなり希少。価格は1525万7000円。
K18RG(40mm径、11.6mm厚)。3気圧防水。手巻き(Cal.54-01、100時間パワーリザーブ)
グラスヒュッテ・オリジナル ブティック銀座 TEL.03-6254-7266