ロレックス @kikuchiのいまどきの時計考

【ロレックス】通信 No.060|ご存じですか?  回転ベゼルを備えたデイトジャスト“ターノグラフ”「前編」。

 ロレックスのコレクションで“ターノグラフ”という名前のモデルをご存じだろうか。双方向に回転するベゼルを装備し、2004年に登場したデイトジャストシリーズのいわば派生モデルである。しかしながら13年にすでに生産終了しており、製造期間はわずか8年とロレックスのコレクションとしては短命に終わったモデルだ。

 デイトジャストには元々このターノグラフと同様に回転ベゼルを装備するモデルは1953年(Ref.6309)からずっとラインナップしている。ご存じの人も多いと思うが、それは“サンダーバード”の愛称で呼ばれていた。もちろんこれは正式名称ではない(このサンダーバードについては別の機会に取り上げたいと思う)。

 つまり、この回転ベゼル付きデイトジャストの第6世代としてターノグラフが登場した04年以前のレファレンス、Ref.16264(第5世代)までは、ターノグラフ名のようなペットネームは付いていなかったのである。ではこのターノグラフという名前はどこからきたのだろうか。

1950年頃に製造されたと言われる計測目盛り付き回転ベゼルを有した初のモデル、Ref.6202。6時位置にTURN-O-GRAPHと表記されている

 文字盤に英語で表示されているのは“TURN-O-GRAPH(ターン・オー・グラフ)”である。実はこのTURN-O-GRAPHとは、1950年頃(異説あり)に製造された、計測目盛り付き回転ベゼルを有した初のモデル、Ref.6202(写真)に与えられた名前だったのだ。

 ダイバーズウオッチの代名詞的な存在であるサブマリーナーは、この回転ベゼルの技術を応用して作られたと言われるほど、ある意味伝説的なモデルなのである。その語源は、ベゼルが回転してゼロに戻る「ターン・オー(ゼロ)」からきている。しかし、50年以上も前の歴史的なモデルの名を04年のモデルチェンジを機に突如としてこのスポーツ系でもないデイトジャストの派生モデルに継承させたのかは謎である。

(右)Ref.116264、K18WG×SS(36mm径)(左)Ref.116263、K18YG×SS(36mm径)。ともに100m防水。自動巻き(Cal.3135)

 さて、このターノグラフだが、ラインナップのすべてがコンビモデルで、ステンレスモデルやフルゴールドモデルは存在しないというのも珍しい。しかも、あくまでもデイトジャストの派生ということからケースサイズは36mmとほどよい大きさだ。

 それにもかかわらず目盛の付いた双方向回転ベゼルに秒針が赤針と、パッと見はスタンダードなスタイルながらも、落ち着きすぎることもなく適度にスポーティさも楽しめる。ターノグラフはある意味ではこのほど良さこそが大きな魅力と言えるだろう。

 現在のユーズドの実勢価格は60万円台後半から80万円台半ばといったところだ。回転ベゼルだけにホワイトゴールド素材を使ったRef.116264であれば、ゴールドっぽさが前面に出ることもないため、ビジネスでもさりげなく着けられると思うのだがいかがだろうか。

 次回の後編では、今回取り上げたターノグラフ(Ref.116264)とそのひとつ前のRef.16264を実機で比較検証してみたいと思う。

菊地 吉正 - KIKUCHI Yoshimasa

時計専門誌「パワーウオッチ」を筆頭に「ロービート」、「タイムギア」などの時計雑誌を次々に生み出す。現在、発行人兼総編集長として刊行数は年間20冊以上にのぼる。また、近年では、業界初の時計専門のクラウドファンディングサイト「WATCH Makers」を開設。さらには、アンティークウオッチのテイストを再現した自身の時計ブランド「OUTLINE(アウトライン)」のクリエイティブディレクターとしてオリジナル時計の企画・監修も手がける。

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