ドイツ時計

高品質な仕上がりながら価格を抑えたチュチマの戦略モデルがすごい

ドイツに拠点に置くチュチマ・グラスヒュッテが2019年バーゼルワールドで発表した新作パトリアが、いま時計好きの間で大きな注目を集めている。

高級ライン“パトリア”初となるスチール仕様

 
 2008年に創業地であるグラスヒュッテへと帰還を果たしたチュチマ・グラスヒュッテは、これを機に自社ムーヴメントの開発に乗り出した。

 こうして13年に完成した自社ムーヴメント、キャリバー617を搭載したモデルが、現在チュチマの高級ラインとして展開されている“パトリア”だ。ちなみにパトリアとは日本語で“故郷”を意味する。このことからも同社にとってグラスヒュッテへの帰還がどれほど念願だったのかうかがい知ることができるだろう。

パトリア ■Ref.6600-02。K18RG(43㎜径)。5気圧防水。手巻き(Cal.617)。193万7520円

 
 そして、これまで18金仕様のみしか展開されていなかったこのパトリアに、19年の新作として登場したのが、スチール仕様のパトリア アドミラル ブルーである。実はこのモデルがいま時計好きの間で注目を集めているのだ。

パトリア アドミラル ブルー ■Ref.6610-01。SS(43㎜径)。5気圧防水。手巻き(Cal.617)。75万3840円(2019年7月発売)

 従来のゴールド仕様が持つ古典的な雰囲気に対して、ぐっと現代的な雰囲気が高められたスチール仕様。やはり注目すべきは、“チュチマ(かつてチュチマとは品質の最高グレードを示す名称だった)”の名にふさわしいハイクオリティな仕上がりだろう。

 本作では、丁寧に鏡面仕上げを施したケースや高品質のブルーエナメル文字盤を与えることで、スチール仕様とは思えぬ気品を醸し出しているのである。

 また搭載する自社製のキャリバー617では、青焼きネジこそ使われていないが、メッキ処理した受けに伝統的なグラスヒュッテ・ストライプ(縦縞の装飾)が丁寧に施されたほか、ゴールドシャトン(受け石を押さえるビス留め部分)を備えた、いわゆる“グラスヒュッテ様式”(同地方で伝統的に用いられている意匠のこと)に倣っており、その見た目は時計好きにもしっかりと刺さる秀逸な仕上がりだ。
 さらにフリースプラングや巻き上げヒゲなど、精度を追求した高級機にふさわしい機構を装備する点も見逃せない。

 そして、なりより驚きだったのが、その戦略的な価格だろう。
 ムーヴメントの仕上げなど既存の18金仕様とまったく同じであるにもかかわらず、価格は70万円台(ゴールド仕様は約194万円)とかなり控えめなのである。その完成度の高さを考えれば驚異的なコストパフォーマンスと言えるだろう。

 これだけの完成度と魅力的な価格設定ならば、時計好きの間で話題となっているのも納得である。パトリア アドミラル ブルーは、今後同社の主力モデルとなっていくに違いない。

(文◎堀内大輔)

 

 

パトリア以外の2019年新作もチェック

フリーガー オートマティック


1970年代に見られた印象的なグラデーションカラーを文字盤に採用した新シリーズ。実用的なデイデイト表示を備える一方、チュチマ・グラスヒュッテのエントリーモデルとして、リーズナブルな価格を実現した。約38時間のパワーリザーブを備えるCal.330を搭載する。
■(左)Ref.6105-26。(中)Ref.6105-24。(右)Ref.6105-22。SS(41㎜径)。10気圧防水。自動巻き(Cal.330)。各20万5200円(8月発売)

フリーガー オートマティック

2018年発表のフリーガー オートマティックに新色のグリーン文字盤が登場。文字盤の中央から外周に向かって濃くなるグラデーションを採用することで、5分刻み表示のレッドペイントが明瞭となり、デザインのアクセントとしても効いている。
■Ref.6105-30。SS(41㎜径)。10気圧防水。自動巻き(Cal.330)。24万6240円(7月発売)

【問い合わせ先】
モントレックス

“チュチマ・グラスヒュッテ”公式サイト
http://www.montrex.co.jp/tutima.html

-ドイツ時計