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チューダー2019年新作 コンビモデルの意外な真実とは?

日本上陸で注目を集めるチューダー最新作

 2018年10月に日本へ上陸(正確には再上陸)した“チューダー”という時計ブランドをご存じだろうか。
 長く日本での正規流通がなかったため一般の認知度は高くないが、何を隠そう、あのロレックスのディフュージョンブランド(価格を抑えた普及ブランドのこと)であり、時計好きの間では昔からよく知られた存在だ。

 近年は、かつて自社で手がけた時計のデザインに範を得た“ブラックベイ”コレクションが好評を博し、ヘリテージモデルのラインナップを強化。2015年には初の自社製ムーヴメントを完成させるなど、攻めの戦略で存在感を増している。

 またチューダーの時計は、高スペックな割に価格設定が手頃で、高いコストパフォーマンスが大きな魅力だ。それゆえ機械式時計ビギナーにもおすすめできるブランドの筆頭でもある。

チューダーが1969年に手がけたダイバーズウオッチ(左)。現在は、こうした過去のモデルのデザインを踏襲したコレクションを中心に展開している(右)

 

 そんな同社が2017年から展開しているブラックベイの“S&G”シリーズは、“STELL(スチール)”と“GOLD(ゴールド)”の頭文字にちなむ、いわゆるコンビモデルである。
 19年にはこのシリーズにクロノグラフとスムースベゼル仕様が新たに追加され、これも大きな注目を集めた。

ブラックベイ クロノ S&Gは、レトロな雰囲気がグッと強調されており、男心をくすぐる魅力的な仕上がりだ。このブレスレットタイプのほか、レザーベルトタイプとファブリックベルトタイプの計3タイプが展開される

新作のブラックベイ 41 S&G。固定ベゼルタイプで、5連ブレスレットを装備されたことでドレッシーな雰囲気がいっそう強調されている

 

 このS&Gシリーズは、現在、先の新作二つに加え、2017年発表の回転ベゼルタイプの計3種類が展開されている。
 いずれもイエローゴールドを組み合わせることによって高級感がプラスされた秀逸なデザインが大きな魅力となっているが、それ以上にリーズナブルな価格設定を知って驚いた時計ファンは多いのではなかろうか。

ブラックベイ クロノ S&G (Ref.79363N) 国内定価72万4700円 ※オールスチール仕様(Ref.79350)は54万900円

ブラックベイ 41 S&G (Ref.79543) 国内定価44万200円 ※オールスチール仕様(Ref.79540)は31万7900円

ブラックベイ S&G (Ref.79733N) 国内定価54万700円 ※オールスチール仕様(Ref.79230R)は39万6000円

 普通クロノグラフのコンビモデルともなれば、100万円オーバーでもおかしくはないところだが、ブラックベイ クロノ S&Gは、なんと約72万円とかなりお値打ちなのである。
 
 ディフュージョンブランドのため割安なのは当然と言えば当然なのだが、ロレックスの同属性のコンビモデルと改めて比較してみると、そのお値打ち感がおわかりになるだろう。

コスモグラフ デイトナ Ref.116503 国内定価174万9600円

デイトジャスト Ref.126303 国内定価123万1200円

サブマリーナデイト Ref.116613LB 国内定価139万3200円

 デイト表示の有無や防水性などのスペック面でも違いがあるため、単純に比較できるものではないが、それでも軒並みロレックスの半値以下で購入できてしまうのである。
 

意外と知られていないS&Gシリーズの真実

 ではなぜS&Gシリーズではこれほどまでリーズナブルな価格設定が可能なのか、不思議に思った人も少なくないはずだ。
 
 このカラクリは、意外と単純。チューダーではS&Gの素材を“イエローゴールド”としか表現していないために勘違いされやすいが、実は“金張り”を用いているからにほかならない。
 しかし、すべてが金張りというわけではなく、ベゼルとブレスの1コマ目(フラッシュフィット部)は18金だ。
 金張りと18金を使い分けることで価格を抑えているというわけである

赤の丸囲み部分のみ18金ゴールドを用いている

 

 このことは、オールスチール仕様と重量を比較してみても明らかだ。
 例えばブラックベイ S&Gの場合、オールスチール仕様が約183gなのに対して、S&Gは約187g。金のほうが圧倒的に比重が大きいのにもかかわず、重さはほとんど変わらないのである。
 
 ちなみに、ロレックスのサブマリーナではオールスチール仕様の総重量が約148g、18金を用いたコンビ仕様が約174gと、25gほど重い。※重量は編集部調べ

ブラックベイのオールステンレス仕様。ケースサイズは標準的だが、重量は約183gあり、意外と重い

 

 ただ、金張りと18金を使い分けたのは、なにもコストカットだけが理由ではないだろう。
 先にもあったように、ブラックベイのブレスレット仕様は約183gと、そもそもが重い時計だ。
 仮にすべてに18金を用いたとしたら、重量は優に200gを超えてしまうだろう。200gと言えば、ロレックスのシードゥエラーよりもなお重い。
 デイリーユースを想定したブラックベイで、これ以上重くなるのは避けたかったのではなかろうか。

 こうした実用性を優先させるあたり、ロレックスのディフュージョンブランドらしいではないか。

文◎堀内大輔(編集部)

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