2018年10月に数十年ぶりに日本での正規取り扱いが再開されたチュードル改め、チューダー。いま旬のこのブランドにスポットを当て、アンティークウオッチ専門誌『LowBEAT』のバックナンバーに掲載されたアンティークチュードル特集を今回から連載で紹介しよう。2回目となる今回は、チューダー サブマリーナの第1世代にスポットを当てる。なお、記事内では当時の呼び名に合わせて“チュードル”のまま表記している。
<前回記事>
アンティーク解体新書
「チュードル サブマリーナ」②
チュドール サブマリーナが登場したのは、1954年。これはロレックスのサブマリーナが当時のバーゼル見本市で正式発表された年でもあり、つまりサブマリーナは両ブランドでほぼ同時に誕生した。
同社ではファーストモデルを自動巻きモデルのRef.7922とし、その翌年に手巻きモデルのRef.7923が追加されたと公表しているが、これにはやや疑問の声も聞こえてくる。というのも、サブマリーナで手巻きムーヴメントを搭載していたのは、後にも先にも7923のみであったことに加え、ベゼルの最初の15分までの間に1分間隔の目盛りがないこと、秒針の先端がドットデザインになっているなど、ロレックスにおけるサブマリーナのファーストモデルRef.6204と同じディテールを持っているからだ。なお、搭載された手巻きムーヴメントはETAのCal.1156、および1182であった。
対して自動巻きモデルRef.7922では、フルーリエ(FEF=Fabrique'd Ébauches de Fleurier)のCal.350をベースにモディファイしたCal.390が採用された。また、ベゼルには15分まで1分刻みの目盛りが設けられているほか、さらに秒針はいまや見慣れたドットデザインへと仕様変更。意匠としてはロレックスのサブマリーナはRef.6205とマッチする。
さらに1957年(58年とも)には場したとされるビッグクラウンを持つRef.7924が登場。このモデルから防水性が100mから200mにアップした。ここで興味深いのが、Ref.7925と呼ばれるモデルだ。チュードルの公開する資料のなかに登場するレファレンスで、Ref.7924の特徴を備えており、防水性が100mというモデルのようなのだが、この7925というレファレンスをもつ個体が市場に出てきた例はなく、当時のロレックスの技術者用のパーツカタログをみても存在しない幻のレファレンスとなっている。
1959年頃からはRef.7928というモデルも登場した。これは、チュードル サブマリーナの第1世代として分類されるRef.7900系の最終モデルに位置付けられている。15分まで1分刻みの目盛りを設けたベゼル、文字盤にはチュードルのブランドネームとともに小バラのモチーフがあしらわれ、ムーヴメントにはフルーリエベースの自動巻き、Cal.390を搭載する。ここまではこれまでのモデルと比較してもデザイン的にはそう変わらないが、このRef.7928が従来と大きく異なるのは、リューズを衝撃から守るリューズガードが装備された点、さらにこれに伴い、レギュラーモデルとして200m防水を達成した点である。
デザイン的にもスペツク的にも完成されたスタイルを獲得したことから、1959年頃から第2世代モデルが登場する69年頃までのおよそ10年にわたって製造が続き、チュードル サブマリーナにおけるロングセラーモデルとなった。このRef.7928は、ロレックスのサブマリーナでいうところのRef.5512にあたるモデル。こちらもRef.7928と同様の特徴を備えており、様々なディテールのバリエーションを生み出した。
次回は、チュードル サブマリーナの第2世代、第3世代を紹介する。