ソムリエとして世界に認められ、ワインスクールやフレンチレストラン、創作和食店も自ら経営する田崎真也さん。「東京再発見」をコンセプトに、地元の食材、調味、お酒などをそろえた創作和食店「T」も手掛けている。次々に新しいチャレンジを続ける田崎さんだが、その根底にあるのは自分はあくまでサービス業の人間であるということ。その自負はもちろん腕時計にも表れている。
「我々がお客様にサービスをするときは黒っぽい服装をしていますので、仕事中はそれに合うこのラドー(写真・左)を着けています。昔はサービス業の人間が時計を着けるべきではない、という考え方もあったのですが、やはりお客様へのサービスということを考えると時間は重要ですので着けるようにしています。ラドーを選んだ理由としては、薄くて平らだということと、ブレスがフィットしやすいデザインだということ。これだとユニフォームにすごく溶け込んでくれるんです」
レストランのような公共の場では、自分自身も調度品の一つであり、
その空間の重要な要素なんです。
私生活でも相手に不快な印象を与えないよう心掛けるという田崎さん。自己流を表現するのはあくまでそのなかでのことだという。
「不快な印象を与えるかどうかは、場所によっても変わってきます。パリを歩いているのと、東京を歩いているのではまったく違う。レストランのような公共の場では、自分自身も調度品の一つであり、その空間の重要な要素なんです。たとえば、よく日本人は『ネクタイ着用』『上着着た用』と書いてあったら、それを店のルールだと思い込んでしまう。そうではなくて、正装というのは相手に対して快適な印象を与えるっていうのが一つの役割なんです。つまりルールではなく、人と人の関係においてのモラル。そこがなかなか理解できない。だからパリの明るいレストランに、みんなで同じような紺系のスーツ+地味系のネクタイで入ってしまうんです。それはやっぱりおかしい」
腕時計・ネクタイ・靴--- この三つにセンスを感じさせる人は、
自分をよく知り、どこにいても雰囲気をわきまえた行動ができる---
思わず納得してしまう話だ。さらに、腕時計に関する興味深い話も教えてくれた。
「私が最初、サービス業を始めたときに先輩から教えられたのは、ワインを覚えることよりも、お客様を見てどういう方か推測するほうが大事だということです。ワインを薦めるならどのぐらいの予算までいけそうか、というようなことを判断しなければならないからです。その場合、女性よりもお金を支払う男性の身なりをチェックします。そこで腕時計が重要になってくるわけです。あとはネクタイと靴。この3点セットで見ます。どれか1個だけですと、無理をされている場合がありますので(笑)」
田崎さん曰く、その3つにセンスを感じさせる人は、自分をよく知り、どこにいても雰囲気をわきまえた行動ができるのだとか。最後に休暇に愛用しているというラドーのダイバーズウオッチ(写真・左)も見せていただいた。
「釣りをしたり、泳いだりもするときは、シンプルさと妙に重量感のある大きさが気に入っています」
それが田崎さんの考える、休暇を過ごす際の不快感を与えないファッションなのだ。
SINYA TASAKI 1958年3月21日生まれ。東京都出身。77年フランスに渡航。80年に帰国。第3回全国ソムリエ最高技術賞コンクール優勝(83年)、国際ソムリエコンクール第2位(90年)、世界最優秀ソムリエコンクール優勝(95年)などを経て、ソムリエとして世界に名をはせる。99年にはフランス農事功労章シュヴァリエも受章。現在は、各種飲食店を営むほか、講演、イベント、テレビ、ラジオ、雑誌などでも活躍。