そもそもカレンダー機能はビジネスウオッチに必要か?
ビジネスウオッチに求められる機能を考えてみると、実はあまり複雑な機能は必要ないのかもしれない。
というのもクロノグラフやワールドタイマーなど、複雑な機能が増していくごとに時計のデザインは過剰になっていき、ビジネス向けの落ち着いた雰囲気は失われていくからだ。
もちろん、そうした機能があると便利なケースがあることは否めないが、機能が増えればそれだけ故障のリスクも増えていく。
やはり奇を衒わないベーシックな3針モデルを基本線として考えたほうがいいだろう。
しかし、これはあってもいいのではないか?という機能に、カレンダー機能がある。
実際のところ、仕事中に「あれ? 今日は何日だったっけ?」と確認したくなる機会は意外に多く、そのたびにスマホを取り出してチェックするのも煩わしい。小窓に日付けを表示するタイプのシンプルなカレンダーであれば、デザイン的にもそれほど派手なわけでもなく、3針モデルの延長線として考えていいだろう。
カレンダー表示も凝ってくると、月・曜日・日付けを表示するトリプルカレンダーなど複雑なものになってくる。表示も小窓ではなく、文字盤内部にインダイヤルを設けて針で表示するなど、様々なデザインが存在する。
個人の好みもあるが、ブランドによってはこうした複雑なカレンダー表示であっても上品にまとめている。デザイン力が問われるが、そうしたモデルであればビジネスシーンでも十分使えるだろう。
カレンダー付きモデルを使うときの注意点
機械式時計の場合、カレンダー機能は煩わしいという人も少なくない。
というのも、クォーツとは異なり、巻き上げた動力ゼンマイの解ける力が失われてしまうと時計が止まってしまうため、長期間着けなかった場合は、時刻だけでなくカレンダーも修正する必要があるからだ。
シンプルな3針モデルならリューズで時刻を合わせるだけで済むが、カレンダーがあると日付けに加えて現在時刻が午前か午後かを確認する必要もあり、この操作が意外に面倒臭い。
日付けを送るときも、時針が午後9時から午前3時にある状態(これは一般論で、時計によって異なる)で操作すると、カレンダーのディスクを破壊してしまうことがあるため注意しなければならない。
このように、ひとつ機能が増えるだけで、操作が煩雑になるのがある意味、機械式時計の宿命と言えなくもない(それだけ手間がかかるから愛着が湧くとも言えるのだが…)。
ビジネスウオッチの一般的な使われ方として考えられるのは、ウィークデイは毎日使い、土日の週末は外して、月曜日からまた使用するというパターンだろう。
つまり、土日の丸2日間止まらなければ、面倒なカレンダー送りの手間は必要ない。最近は60時間以上の長いパワーリザーブを備えるモデルが増えているが、これはビジネスユースを意識してのことという側面もあるだろう。当然ながら、こうしたパワーリザーブに余裕があるモデルを積極的にチョイスしたい。
高度なカレンダー機能としては、大の月・小の月を判別して日付けを送ってくれるアニュアルカレンダーがある。1年間の日付けを自動判別してくれる高度な機能だが、通常28日までしかない2月のみは手動で操作する必要がある。
その2月はおろか、4年に1回のうるう年まで判別して自動的に日付け調整してくれるパーペチュアルカレンダーを搭載したモデルもあるが、ここまでいくと複雑時計の域であり、価格も跳ね上がってしまうので、あまり現実的ではないだろう。
今回はそうした観点から、ビジネスウオッチとしてオススメしたいカレンダー付きモデルを3本ピックアップしてみた。
編集部:船平レコメンド
JAEGER-LECOULTRE ジャガー・ルクルト
マスター・ウルトラスリム・リザーブ・ド・マルシェ
複雑時計をムーヴメントまで一貫して製造できる高い技術力がジャガー・ルクルトの持ち味であるが、一方で静謐で上品なデザインにも注目したい。
その美的センスがいかんなく発揮されたこのモデルは、薄型自動巻きムーヴメントのCal.938を搭載して薄型化に成功。手首へのフィット感を高めている一方で、ケースサイズは従来モデルの37mmから39mmへとアップさせるなど、かなり現代的にブラッシュアップされている。
文字盤右上のカレンダー表示のほか、左上には43時間のパワーリザーブインジケーターを装備し、さらに秒表示まで含めると三つのインダイアルが並ぶ複雑な文字盤構成だが、すっきりと見やすく仕上げているのはデザイン力の成せる技だ。
ベーシックなデザインでありつつも、さりげなく遊び心を感じさせる技ありのモデルといえよう。
【SPEC】
■Ref.1378420。SS(39mm径/9.85mm厚)。5気圧防水。自動巻き(Cal.938/1)。99万8800円(税込)
【船平のRecommend Point】
「モデル名が示すように10時位置の“パワーリザーブ(リザーブ・ド・マルシェ)”をアイコンとした名作ですが、3時位置にポインターデイト、6時位置にスモールセコンドと、3つの機能を逆三角形に配置した意匠が魅力的です。ビジネスウオッチにはさりげない威張り感が重要だと思うのですが、個性とエレガントさを両立したこのモデルは、まさに理想のモデルだと思っています。ケースの大きさが39mm、厚さが9.85mmとシャツの袖口に納まるちょうどいいサイズなのも魅力です(船平)」
【問い合わせ先】
ジャガー・ルクルト カスタマーセンター
TEL:0120-79-1833
ジャガー・ルクルト公式サイト
https://www.jaeger-lecoultre.com/jp
編集部:佐藤レコメンド
OMEGA オメガ
グローブマスター アニュアルカレンダー
グローブマスターは2015年に誕生したオメガでは比較的新しいシリーズだが、そのルーツは1950年代に当時の最高精度を追求したコンクールで数多くの賞を受けたコンステレーションというコレクションにある。
つまり、オメガの精度へのこだわりを象徴し、そこへマスター クロノメーター認定が加わったことで、精度に加えて耐磁性も考慮するなど、ビジネスシーンを意識した設計が成されている。
さらには大の月と小の月を判別して、月末に自動的に日付け調整してくれるアニュアルカレンダー機能を搭載。往年のコンステレーションを彷彿させる12面のパイーパンダイアル、6時位置の星、ブルーの針がデザイン的なアクセントとしてもうまく効いている。
名門オメガの新しい方向性を感じさせる意欲的なモデルだ。
【SPEC】
■Ref.130.33.41.22.02.001。SS(41mm径/14.71mm厚)。100m防水。自動巻き(Cal.8922)。103万4000円(税込)
【佐藤のRecommend Point】
「カレンダー機能は個人的に必須の機能だと思っていますが、使っていて煩わしいのが、月末のカレンダー調整。この時計はアニュアルカレンダー付きなので年に1回だけ調整すれば良いというのがなんと言っても引かれるところです。しかも高度なカレンダーウオッチなのにすっきりとした顔立ちをしているところも魅力。また、極めて高い耐磁性を備えているので、意外に磁気の影響を受けやすいPC作業時も気にせず着けられるのが良いですね(佐藤)」
【問い合わせ先】
オメガお客様センター
TEL:03-5952-4400
オメガ公式サイト
https://www.omegawatches.jp
編集部:堀内レコメンド
GRAND SEIKO グランドセイコー
ヘリテージコレクション
一見質実なスタンダードデザインでありつつ、ディテールへのこだわりは世界でもトップレベルなのがグランドセイコーの魅力だが、このモデルも年齢を問わず使えそうな非常にバランスの良いデザインを踏襲している。
搭載されている自動巻きムーヴメントはグランドセイコー自慢のCal.9S65で、巻き上げ効率と耐久性、耐衝撃性を両立しつつ、3日間のパワーリザーブを実現している。ケースやブレスレットも面によって細かく研磨の種類を変えており、インデックスの繊細な面取りやケースからラグに至るラインの美しさも相まって、上々の存在感を漂わせている。
カレンダーはシンプルな日付け表示のみだが非常に見やすく、どの業種でも威力を発揮するビジネスウオッチとして高い人気を誇っているのも納得だ。
【SPEC】
■Ref.SBGR317。SS(40mm径/13mm厚)。10気圧防水。自動巻き(Cal.9S65)。52万8000円(税込)
【堀内のRecommend Point】
「ビジネスウオッチとして、嫌味なく着けられるベーシックな意匠ながらも、外装のクオリティが良く、高級感があります。また3日間のパワーリザーブを備えるため、週末に着けていなくても止まらず、改めて時刻(日付け)合わせしなくていいというのはかなり便利です(堀内)」
【問い合わせ先】
グランドセイコー専用ダイヤル
TEL:0120-302-617
グランドセイコー公式サイト
https://www.grand-seiko.com
構成◎佐藤杏輔(編集部)/文◎巽 英俊