1926年、ロレックスの創業者であるハンス・ウイルスドルフの代理で、腕時計ディーラーでメーカーでもあるヴーヴ ドゥ フィリップ ヒュンターによって商標登録されたチューダー。
その後、ハンス・ウイルスドルフが独占的使用権を取得し、ロレックスのデュフュージョンブランドとして展開されてきた同ブランドが、徐々に独自の路線を歩むようになったのは1960年代になってからだ。
そんな転換期において誕生したモデルのひとつが、1970年に発表された同ブランド初のクロノグラフ“オイスターデイト クロノグラフ”である。
時代的にはロレックスを代表するコスモグラフ デイトナのディフュージョンコレクションに相当するモデルだったが、その見た目はまったく異なるものであった。
今回は、そんな時代に生まれた象徴的なクロノグラフモデルをクローズアップ。その変遷を紹介しよう。
ホームベースのようなインデックスをもつ1stシリーズ
1970年からわずか1年ほどだけ製造されたと言われる1stモデルのうちのひとつ。その製造期間の短さもあって市場にほとんど出てくることはない。そのため、ムーヴメントとしては廉価なクロノグラフにもかかわらず、200万円近い高値を付けるレアモデルとなっている。
■Ref.7032。SS(39mm径)。手巻き(Cal.Valjoux 7734)。1970年頃製。参考資料
“モンテカルロ”の通称をもつ人気モデル
1971年から製造された“モンテカルロ”の通称をもつ2ndモデル。時計としてのクオリティはこちらのほうが高いのだが、1stモデルと比較すると数があるため、安く購入できる。なお由来は、インダイアルのデザインがルーレットのようだから公営カジノが有名な同地の名が付いたという説や、ラリー競技の原型ともなった世界ラリー選手権“ラリー・モンテカルロ”にちなむなどの説がある。
■Ref.7159/0。SS(40mm径)。手巻き(Cal.Valjoux 234)。1976年製。参考価格130万円
チューダー初の自動巻きクロノ
チュードル初の自動巻きクロノグラフモデルとして、1976年に登場。このモデルから“クロノタイム”のペットネームが採用された。第4世代コレクションが登場する89年まで製造された。と言っても、第4世代以降もムーヴメントはバルジューのCal.7750であり、基本はこのときに確立されていた。
■Ref.94210。SS(40mm)。自動巻き(Cal.Valjoux 7750)。1977年製。参考価格80万円
往年のデザインを復刻した現行モデル
2010年から展開されている復刻版。ホームベース形のインデックスが特徴だった1stのデザインを踏襲したモデル(左)と、モンテカルロのデザインを踏襲したモデル(右)が展開される。現在のチューダーは自社でムーヴメントも手がけるが、本作で搭載されるのETA社ベースのムーヴメントだ。また定価は50万円アンダーとアンティークモデルよりも安価。普段使いするのであれば、防水も保証される現行モデルがおすすめだ。
■(左)Ref.70330N。(右)Ref.70330B。ともにSS(42mm)。150m防水。自動巻き(Cal.2892)。国内参考定価各49万600万円
文◎堀内大輔(編集部)