ハイエンドブランドの高級モデルというと、いままではゴールドやプラチナといった貴金属が使われることがほとんどだった。時計素材としての貴金属は、その美しい輝きが高級感をアピールするだけでなく、酸化に強く肌へのアレルギー負荷が低いという特徴もある。しかしどうしても重くなってしまうため、その装着感が苦手だという人も多い。ゴールドのギラっとした輝きになじめないという人も少なくないだろう。
時計向けの素材として、ここに来て俄然注目度がアップしているのがチタンだ。耐食性や耐アレルギー性に優れ、工業製品の素材としては広く普及していたチタンだが、粘性が高いために時計ケースのような精密な加工が求められる製品には難しいとされてきた。しかし近年は金属加工技術の向上で、多くのブランドがチタンケースを採用するようになっている。純チタン特有の濃いやや鈍色のトーンは、ゴールドやプラチナとは異なったシックな高級感を感じさせる。なによりゴールドはもちろん、ステンレススチールと比べてもはるかに軽いため、長時間装着していても疲れないのは大きなメリットだ。また前述のように耐食性に優れているため、ダイバーズウオッチなどにも使いやすい。
チタンには大きく純チタンとチタン合金のの2種類があるが、最近は合金の混合具合で高級感あるトーンを生み出すことも可能なチタン合金のグレード5が主流になっている。表面加工技術も向上しており、傷への強さもステンレススチールを大きく凌駕するモデルが目立つ。
こうしたチタン加工技術の向上を受けて、ハイエンドブランドもチタンの高級モデルを新作として続々と投入している。今回はそんなラグジュアリーなチタンケースモデルをピックアップして紹介しよう。
A.ランゲ&ゾーネ
オデュッセウス
■Ref.363.117。TI(41mm径)。12気圧防水。自動巻き(Cal.L155.1 DATOMATIC)。世界限定250本。ブティック限定。709万5000円(2022年6月発売予定)
オデュッセウスはA.ランゲ&ゾーネが提案する新しいスタイルのスポーティウオッチシリーズだ。ランゲらしいトラディショナルなスタイリングながら、シャープで現代的な雰囲気もあわせもっている。40.5mmのチタンケースは落ち着いたトーンで、そこにビッグデイト表示のアイスブルー真鍮(しんちゅう)製文字盤を合わせてシックに仕上げている。搭載ムーヴメントは毎時2万8800振動の自社製自動巻きで、テンプ受けに波模様の加工を施すなどランゲらしい豪華な仕様。世界限定250本とプレミアム感も高い。
【問い合わせ先】A.ランゲ&ゾーネ TEL.0120-23-1845
https://www.alange-soehne.com/
ローマン・ゴティエ
コンティニュアム チタンエディション
■TI(41mm径)。5気圧防水。手巻き。世界限定28本。539万円
最も注目度が高い独立時計師のひとり、ローマン・ゴティエが生み出したチタンモデル。モダニズムの究極型ともいえそうなケースは、チタンの多面体ベゼルが非常にインパクトあるデザインだが、これはラウンド加工した後にまっすぐなカットを6カ所に入れるという複雑な加工によって生み出されている。文字盤にもサンドブラスト仕上げの純チタンを採用しており、ケースとのコントラストが楽しい。2時位置のリューズなどにあしらわれた赤の差し色もいいアクセントになっている。
【問い合わせ先】スイスプライムブランズ TEL.03-6226-4650
https://romaingauthier.jp
ローラン・フェリエ
クラシック オリジン ブルー
■Ref.LCF036.TI.CG。TI(40mm径)。3気圧防水。手巻き(Cal.LF 116.01)。443万3000円
落ち着いた雰囲気のドレスウオッチを得意とするローラン・フェリエも、新作にチタンケースモデルを投入してきた。シンプルなラウンドケースはグレード5チタンを採用しており、そこに19世紀の懐中時計にインスパイアされたボール型リューズを合わせることで、クラシカルな味付けをしている。妖艶なダークブルーの文字盤もシックで美しい。搭載ムーヴメントはネジ込み式テンプとブレゲヒゲゼンマイを採用した自社製手巻きで、80時間パワーリザーブと実用性も高い。
【問い合わせ先】ローラン・フェリエ / DKSH マーケットエクスパンションサービスジャパン cg.csc1@dksh.com
本国サイト:https://laurentferrier.ch
ショパール
アルパインイーグル ケイデンス 8HF
■Ref.298600-3005。TI(41mm径)。100m防水。自動巻き(Cal.01.12-C)。世界限定250本。246万4000円
ラグジュアリースポーツウオッチの新たな注目株となっているアルパインイーグルも、チタンケースモデルだとそのクオリティの高さがよりはっきりする。10mmを切る薄いケースはチタン素材によって非常に軽く仕上がっており、ダークなトーンは全体に施されたヘアラインの美しさを引き立てている。自社製のムーヴメントは毎時5万7600振動のハイビートCOSCクロノメーター仕様で、精度の高さは折り紙付き。ショパールらしいリッチなスポーツウオッチを、チタン素材をうまく使うことでさらにハイレベルに昇華した意欲作といえよう。
【問い合わせ先】ショパール ジャパン プレス TEL.03-5524-8922
https://www.chopard.jp
構成◎堀内大輔(編集部)/文◎巽 英俊