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【価格破壊ウオッチを実機レビュー】新上陸を果たした、“ニバダ・グレンヒェン(Nevada Grenchen)”のクロノマスターブロードアロー

 ネームバリュー、価格、機能、デザイン、希少性、歴史など、腕時計を購入する際にどこを重視して選ぶのかは人それぞれだが、そのなかでも、メーカー、ユーザーの双方にとって特別な価値をもつのが“歴史”だろう。

 なぜなら、新興ブランドでも努力次第で技術力やデザイン性を獲得することができるのに対して、“歴史”は一朝一夕では手に入らないからだ。“歴史”という特性は、時間を積み重ねてきた時計ブランドやモデルだけが獲得できる、ほかにはない付加価値なのだ。

 そして、そんな“歴史”という付加価値を、デザインと機能の両面から腕時計の魅力として体現しているのが、近年時計界でトレンドとなっている“復刻モデル”である。そして、今回注目したのはそんな復刻モデルを中心にコレクションを展開する、“ニバダ・グレンヒェン”という時計ブランドだ。


 “ニバダ・グレンヒェン”は今季から日本での本格展開を開始する新上陸ブランドだが、創設は1879年と143年の歴史を数える老舗ブランドでもある。1980年代に一度、休眠状態となるが、2019年に復活を果たし、過去のアーカイブを基にしたアイコニックな復刻モデルをラインナップしている。

 今季から日本での発売を開始予定(発売時期は未定)となっており、実機を見る機会をえたため、どこよりも早く実機レビューをお届けしていく。


【今回の実機レビューモデル】

ニバダ・グレンヒェン(NIVADA GRENCHEN)
クロノマスター ブロードアロー

■Material.:316Lステンレススチール&ブレス(サファイアクリスタル風防)
■Size:38mm、ラグの上下約46.5mm、厚さ13.75mm、ラグ幅20mm
■Waterproof:100m防水
■Movement:手巻き(SW510 M BH B)
■Price:23万7600円


【ニバダ・グレンヒェン(NIVADA GRENCHEN)のブランド紹介】

 1879年にヤコブ・シュナイダーによってスイス・ジュラ地方のグレンヒェンに設立された時計ブランド。自動巻きの黎明期と言える30年代前半にすでに自動巻き時計を製造していたニバダは、その後も勢力的に腕時計の開発と技術開発を継続し、アメリカ海軍の南極探検のミッション“ディープ・フリーズ・1チーム”で採用された“アンタークティック”を皮切りにダイバーズウオッチからクロノグラフまで、実用時計の名作を輩出。クォーツショックにより機械式時計はシェアを落とし始め、80年代には事業解体を余儀なくされたが、時計ブランド“ウィリアム エル 1985”を立ち上げたギョーム・ライデと時計メーカーであるモントリシャール・グループのオーナーであるレミ・シャブラによって復活。名作をリニューアルしたヘリテージコレクションを展開している。


 今回の紹介するのは、1963年に発表された “クロノマスター”の復刻モデル。クロノグラフ、タキメータースケールに加えて、ダイビングや第2時間帯表示のための回転ベゼル、セーリングレガッタのカウントダウンなどの機能を装備した200m防水のダイバーズクロノグラフであり、ニバダ最大のロングランヒットモデルである。


【外装について】


 実用時計として製作されたオリジナルモデルの意匠を継承し、フロントとサイドを含めてケースは汚れや小傷が目立ちにくいヘアライン仕上げがベース。オリジナルを忠実に再現した長めのラグのファセットカット部分、ライスブレス、逆台形の回転ベゼルのサイド部分に鏡面仕上げを取り入れており、実用時計感を邪魔しない絶妙な加減で高級感が高められている。


 また、注目したいのがエッジの仕上げだ。ケース、ラグ、ブレスレットのコマの角には肌にストレスを与えないギリギリの加減で面取りが施されている。鋭角なフォルムを際立たせつつ、装着時の実用性を考慮した作りにこだわりが光る。ブレスレットはヘアライン仕上げのコマで、鏡面仕上げされたライスブレスを挟み込んだ仕様。ミドルケースからラグの先端へと連なるフォルムとリンクした造形、仕上げが採用されており、時計全体のデザインバランスも良好だ。


【文字盤のデザインについて】


 文字盤はさりげないシャイニーな質感を備えた黒文字盤。表面のわずかな荒らしがニュアンスを生み出し、光の当たり方によって表情を変える。


 また、この文字盤はプレス加工で仕上げられているのもマニア心をくすぐるポイントのひとつ。インデックス、12時位置のブランドロゴ、6時位置の英字表記はいずれもエンボス加工で文字盤と高低差を付けて仕上げられており、プリントとも、植字とも異なるオーセンティックで柔らかい質感を備える。アイコンであるブロードアロー針、インデックスに、経年変化した夜光を思わせるベージュのスーパールミノバを塗布しているのもアンティーク感を高めるポイントと言えるだろう。


【ムーヴメントとバックルについて】


 裏ブタはスクリューバックのため搭載するムーヴメントを見ることはできないが機械はセリタのCal. SW510 M BH bを搭載。振動数は毎時2万8800振動。

 文字盤、ケース、ブレスレットと、時計全体を通して1960年代のオリジナルモデルを忠実に再現したデザインが採用されているが、装着時のホールド感や強度に大きな影響を与えるバックルについては、現代のニーズに合わせて厚さと堅牢製を重視した作りを採用。ほかのパーツに比べるとややモダンな印象を感じさせるデザイン、作りについては評価が分かれる点と言えそうだが、筆者としては、アンティークテイストを邪魔しない絶妙なバランスで堅牢さが高められている点を評価したい。


【装着感について】


 ケースサイズは38mm、ラグからラグまでの上下幅は46.5mm、厚さ13.75mm。立体感のあるドーム形風防と逆台形ベゼルを採用したこともあってややボリューム感の仕様なのだが、ミドルケースを薄型に仕上げたことで実寸よりもスリムな印象を感じさせる。やや長めのラグは手首に向けて傾斜を付けており、薄型のブレスレットを採用することで装着感が高められている。


【総評】

 両方向回転ベゼル、外周のペリフェラル・タキメーター、幅広のアローハンド、30分積算計のレッドセクター(レガッタのカウントダウンとして使用)など、アンティークウオッチの世界でもコレクターズモデルとしてマニアックな支持を集める名作の機能とデザインを忠実に再現した良作。現行の機械式クロノグラフとしては小振りな38.3mmのケースに加え、ディテールの細かい作り込みにより、まるでアンティークモデルのような質感と佇まいに仕上げられている。個人的には金型によるプレス成形で作られた文字盤が特に注目したいポイント。独特の風合いと温かみのある質感に心を奪われてしまった。


【問い合わせ先】
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www.hms-watchstore.com/


 

文◎船平卓馬(編集部)

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