機械式時計のなかでも突出した人気を誇るクロノグラフ。一般的に、デザインに注目することが多いが、今回は巻き上げ機構に注目して、“手巻き”と“自動巻き”、二つのジャンルでおすすめモデルを紹介
絶滅危惧種と思われていた手巻きクロノグラフが復活
数ある機械式時計のジャンルのなかでも特に高い人気を博しているクロノグラフ。近年は汎用ムーヴメントが浸透したことで、20万円台までの価格帯でもラインナップが拡大している。多彩なモデルがリリースされているが、編集部として注目したいのがムーヴメントだ。
周知の通り、現代では機械式腕時計の主力は自動巻きである。クロノグラフは特にその傾向が強く、手巻きは絶滅危惧種と言える状況なのだが、今期はわずかな数ながら手巻きのクロノグラフが復活し、時計好きから注目を集めているのだ。
着けていればゼンマイを巻き上げてくれる自動巻き時計は便利で、選択肢の幅も広い。その点、手巻きのクロノグラフは自分でゼンマイを巻き上げる必要があるため、使いやすさでは自動巻きクロノグラフに軍配が上がるのだが、希少性、薄型でコンパクトなデザイン、ゼンマイを巻き上げる心地よい感覚が、がなんとも言えず魅力的である。
少々、マニアックではあるが、機械式クロノグラフで、少し語れるモデルを探している人は、ぜひ注目しておきたいジャンルのひとつと言えるだろう。
》手巻きクロノグラフの魅力とは
ゼンマイを巻く感覚と小振りなサイズが魅力
1901年創業の名門バルジューの手巻きムーヴメントを搭載。ムーンフェイズ付きのクロノグラフながら36mm径という現代においてこの価格帯で手に入れることか難しいサイズ感に加え、手動でゼンマイを巻き上げる際の心地よい感覚がマニア心をくすぐる。
OUTLINE(アウトライン)
リビルドシリーズ ムーンフェイズクロノグラフ7768
1980年代に販売されていたデッドストックの手巻き式時計(スイスメイド)のムーヴメントとケースをそのまま生かして、文字盤や時分針のデザインを作り変えた、リビルドモデル。ゴールドのアルファ針にアップライト仕様のローマンインデックスを合わせた50年代風のデザインが印象的。12時位置の30分積算計には、当時の積算カウンターに見られたテレホンユニットを再現している。
■Ref. Ref.YK20203-1。SS(36mm径)。非防水。手巻き(ヴァルジュー社製 Cal.7768)。24万2000円
【問い合わせ先】
シーズ・ファクトリー
TEL:03-5562-0841
アウトライン公式サイト
https://outlinewatches.tokyo
(左)風防ガラスにはアクリルガラスを使用。ぷっくり盛り上がったドーム型風防がアンティーク感を醸し出す。(右)数量限定のため、裏ブタにはすべてのモデルに対してシリアルナンバーを刻印。
HAMILTON(ハミルトン)
イントラマティック クロノグラフ H
ホワイトダイアルに横目のブラックのサブダイアルから、“パンダダイアル”の愛称で親しまれたクロノグラフAの復刻版、手巻き仕様。ETAの7753をベースにしたハミルトンのエクスクルーシブムーヴメント、Cal.H-51を搭載しており、60時間のパワーリザーブと2万8800/時の振動数を備える。
■Ref.H38429710。SS(40mm径)。10気圧防水。手巻き(Cal.H-51)。26万5100円
【問い合わせ先】
ハミルトン/スウォッチ グループ ジャパン
TEL.03-6254-7371
ハミルトン公式サイト
https://www.hamiltonwatch.com/ja-jp/
》自動巻きクロノグラフの魅力とは
腕の動きに合わせてゼンマイを自動で巻き上げ
クロノグラフの名門バルジュー社が開発した7700系の系譜に連なる自動巻きCal.7753を搭載。自動巻きはローターを備えているため全般的に手巻きよりも厚みが生じる。その反面、腕の動きに合わせてゼンマイを巻き上げてくれる利便性の高さは大きな魅力だ。
TISSOT(ティソ)
ティソ ヘリテージ1973
スイスを代表するケッセル・クラシック・レーシングチームとのパートナーシップを象徴するモデル。1973年に存在したレーシングウオッチのスピリットを受け継いだ立体的で柔らかなラインを備えたオーバルケース、オレンジとブルーを差し色に加えた色彩豊かなディテールが70年代らしいレトロなテイストを感じさせる。
■Ref. T124.427.16.041.00。SS(43mm径)。10気圧防水。自動巻き(Cal. ETA7753)。26万1800円
【問い合わせ先】
ティソ
TEL:03-6427-0366
ティソ公式サイト
https://www.tissotwatches.com/ja-jp/
YEMA(イエマ)
スピードグラフ
“スピードグラフ”は1960年代に製作された同社初のクロノグラフから範を得ており、39mmの現行としてはやや小振りなケースや、リバースパンダの通称で知られる黒地に白いインダイアルを配したツーカウンタークロノグラフを搭載。つや消しの黒いアルミニウムリングを設置した両方向回転ベゼルなど、当時のモデルから継承された意匠が、レトロでレーシーな雰囲気を醸し出している。
■Ref. YSPEE2019-AU31S。SS(39mm径)。10気圧防水。自動巻き(SEIKO製Cal.NE86)。18万9200円
【問い合わせ先】
イエマジャパン
TEL:03-5875-8810
イエマ公式サイト
https://jp.yema.com
文◎船平卓馬(編集部)