【時計大国イギリスが復活か!?】勢力を拡大する“UKウオッチ”から、注目の3ブランドを選出

》復活を果たした時計大国イギリス、その最新動向と注目ブランドとは

 時計の歴史といえば、真っ先にスイスを思い浮かべる人が多いと思う。しかし、あまり知られていないが、イギリスは1600年代から1800年代にかけて時計製造のリーダー的存在であり、 “イギリス時計の父”として知られている時計師のトーマス・トムピオンや、その弟子であり時計産業で多くの功績を残したジョージ・グラハムなど優れた時計師を輩出している。

 海洋探検家で太平洋の航海でオーストラリアやハワイ諸島を発見したジェームズ・クック船長が遠征時に採用したイギリス初のクロノメーターを製作したジョン・ハリソン、レバー式脱進機を発明したトーマス・マッジなども時計史にその名を刻んでおり、時計製造の高度な技術と革新的な機構は、大英帝国の成長にも重要な役割を果たした。

 一説によれば19世紀前半、世界の半分以上の時計が英国で作られていたとされているが、産業革命が始まったことで状況が変わる。イギリスの時計職人達は、この革命による新技術を受け入れず、アメリカやスイスで行われていた大量生産に追いつくことができなかったのだ。さらには第二次世界大戦後に時計産業の復興を試みるも、イギリスの時計産業はクオーツ時計の登場により、衰退の一途を辿ることとなった。

 その後、ロジャー・W・スミスのような独立時計師のほか、小さなグループに率いられたインディペンデントブランドが登場したことで英国時計が復活。 現在は50以上の時計ブランドが時計を製造している。

 前置きが長くなったが、今回は、そんなイギリスの時計ブランドの中から、独自のウオッチメイキングを行なっている注目の3ブランドを紹介する。残念ながら日本未上陸のブランドだが、いずれもスイス、ドイツのブランドとはまた異なる魅力を備えた実力派なので、ぜひチェックしてみて欲しい。


【FEARS(フィアーズ )】

 フィアーズはイギリスで最も古い、ファミリー経営の時計会社のひとつ。1846年、イギリス西部のブリストルにエドウィン・フィアーが工房とショールームを構え、ブランド初の懐中時計を発表。1877年に彼が亡くなった後、息子のエイモス・ダニエルが事業を継承する。

 フィアーズはその後も1920年代初頭に初の腕時計を発表し、戦後の時代を経て繁栄するが、76年に閉鎖。2016年には、エドウィン・フィアの来孫であるニコラス・ボウマン・スカルギルが、ロンドンのロレックスで時計師を経験したのち、ファミリー企業として再出発した。現在は歴史あるロンドン東部、テムズ川沿岸にあるドックランズに拠点を構え、少量生産で魅力的な時計を生み出している。


ブラウンウィック・ブルー
 1924年に初めて製造されていたフィアーズのクッションケースモデルにインスパイアされたデザインが特徴。クラシックなディテールと現代的な色使いの組み合わせが魅力的だ。

■SS(38×38mmサイズ)。手巻き(ETA 7001)。5気圧防水。3350ポンド(約47万円)

》フィアーズ公式サイト
https://www.fearswatches.com


【VERTEX(バーテックス) 】

 1885年にロンドンで生まれたクロード・リヨンは、17歳から時計業界で働き始める。 リヨンが最初に設立したのは、第一次世界大戦中のイギリス軍用の時計を製造していたドレッドノート・ウオッチと呼ばれるブランドだ。

 1916年にバーテックス・ウォッチ社を設立し、ロンドンとスイスのラ・ショー・ド・フォンにオフィスを構え、 38年にはリヨンの義理の息子である、ヘンリー・ラザロが入社。 第二次世界大戦中にラザロはイギリス陸軍の大尉として活躍し、スイス時計産業に造詣が深かったことから、イギリス軍の時計調達に協力するよう依頼されることになる。

 1960年代、バーテックスはダイビングウオッチとスポーツウオッチのシリーズを発表するが、クオーツ時計が市場を席巻したことにより、72年に会社を閉鎖することを余儀なくされた。

 時は流れ、2015年に創業者であるクロード・リヨンの曾孫であるドン・コクランが会社を再興し、新時代に乗り出した。 彼は再興に当たって「バーテックスの復帰は99歳の祖母の死によるもので、親しい間柄でもある祖母の人生を称えるために父の会社を復活させること以上に良い方法はない」と語っている。


The Bronze 75
 バーテックスが1944年と45年にイギリス軍のために製作した時計へのオマージュ。バーテックスのほかに、ビューレン、レマニア、ティモール、ジャガー・ルクルト、シーマ、オメガ、レコード、IWC、ロンジン、エテルナ、グラナの計12社が製造していたことから、愛好家の間ではダーティーダースとも呼ばれている。スモールセコンド仕様(独立して設けられた小さな秒針のこと)のデザインと、12時位置にプリントされた、イギリス政府所有の官給品であることを示すブロードアロー(矢印マーク)が特徴となっている。

■ブロンズ(40mm径)。 手巻き(ETA 7001) 。100m防水。2900ポンド(約40万円)

Vertex MP45S
 1945年にイギリス軍の依頼を受けてされたが未生産のままで歴史に埋もれていたモノプッシャークロノグラフ を現代風にアレンジした限定150個のスペシャルモデル。

■SS(40mm径)手巻き(sellita SW510 MP )。100m防水。2250ポンド(約32万円)

》バーテックス公式サイト
https://vertex-watches.com


【PINION(ピニオン ウオッチ) 】

 最後に紹介するのはピニオン ウオッチ。プロデザイナーであるピアーズ・ベリーによって設立された注目の新興ブランドだ。ピアーズ・ベリーは1990年代初頭、ロンドンでウェブとデジタルメディアの仕事をしたのち、2000年代にデジタルエージェンシーを共同設立して40本以上の長編映画のデザイン制作を担当した人物。機械式時計のコレクションを始めたことから、ウオッチデザインをしたいという想いに駆られたベリーは2013年に共同創設したデザインエージェンシーを辞め、ピニオン・ウォッチを立ち上げた。

 現代の自動巻きムーヴメントと希少なオールドストックの手巻きムーヴメントを採用し、イギリスでデザインと製造を行なっているのが特徴で、時計製造はイギリス西北部のランカシャーで行われ、経験豊富な英国人時計師イアン・ウォルシュ氏が指揮を執っているようだ。創業7年目を迎えたピニオンウォッチは、イギリスの高品質な時計ブランドとして高評価を得ており、いまでは世界中で販売されている。


TT アントラサイト
 往年のパイロットウオッチを思い起こさせる大きめで堅牢なケース、視認性の高い文字盤デザインをベースに、チタンをケース素材に採用することで個性をプラスしたGMTウオッチ。GMT針と目盛りの差し色も現代的な雰囲気を感じさせる。

■TI(44mm径) 。自動巻き(ETA 2893-2 自動巻き)。100m防水。1958.33ポンド(約29万円)

》ピニオン公式サイト
www.pinionwatches.com

 今回紹介した3ブランドは英国発の時計ブランドのほんの一部に過ぎない。 最近も、英国の時計製造を促進するための業界団体“Alliance of British Watch and Clock Makers”が発足するなど新しい動きが見られ、今後も英国発の革新的な時計ブランドが続々と登場することが予想される。2021年は、イギリス発のウオッチブランドが躍進することを期待したい。


文◎William Hunnicutt
時計ブランド、アクセサリーブランドの輸入代理店を務めるスフィアブランディング代表。インポーターとして独自のセレクトで、ハマる人にはハマるプロダクトを日本に展開するほか、音楽をテーマにしたアパレルブランド、STEREO8のプロデューサーも務める。家ではネコのゴハン担当でもある。

https://www.instagram.com/spherebranding/

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