時計の場合、一般的に1960年代以前に作られたものがアンティークに分類される。
いまよりも手作業の割合が高かった時計が多かったため、“アンティークは作りがいい”と言われるが、しかしながら現行品のように気にせずガンガン使えるかというとそれは違う。
なぜなら何十年も前に作られた古い時計であることにはなんら変わりはなく、経年による劣化などが避けられないからだ。
そのため普段使いするうえでは、それなりに注意も必要となる。アンティークウオッチを楽しむには、古いがゆえの弱点も頭に入れておく必要があるのだ。
そこで今回から、「アンティーク時計の選び方講座」と題して、アンティークを購入するうえで憶えておいてほしいポイントを解説していきたい。
いまも昔も“水”は時計の天敵
アンティーク品と現行品との決定的な違いは防水性能である。
そのためアンティークウオッチを長く愛用していくうえで1番に知っておいてほしい点と言えるだろう。なぜならそれ自体が故障に直結するからだ。
アンティークウオッチの場合、当時たとえ防水仕様に作られた時計であっても、すでに数十年が経過した現在では、基本的に非防水だという認識をもってもらいたい。もちろん水に浸けるなんてことはもってのほかだが、汗にも注意が必要だと思うぐらいの認識でいたほうがよい。
さてこの水に対して真っ向から挑んでいたのが、皆さんもご存じのロレックスで、他社に先駆けて1926年に実用的な防水ケースを開発している。
それはネジ込み式の裏ブタとベゼルをネジ山が刻まれたミドルケースにねじ込む仕組みで、これにネジ込み式のリューズを組み合わせて独自の防水ケース“オイスター”を完成させた。
そして、この技術はやがてダイバーズウオッチ開発へと発展、53年に100m防水を誇るサブマリーナを誕生させるに至る。
ロレックスの防水性能はほかのメーカーよりもかなり進んでいた。その点でも使えるアンティークの筆頭に挙げられる。ただし”OYSTER”と文字盤に記載がある時計を選ぶことをお忘れなく。なぜならば、それがロレックス独自の防水ケース(オイスターケース)を採用しているという証明だからである
それでは、ロレックス以外はダメかというとそうでもない。選ぶ際の目安は裏ブタがスクリューバックかどうかという点を押さえるといい。スクリューバックとはネジ込み式の裏ブタのことを言い。ミドルケースに裏ブタをねじ込んで密閉度を高めたものだ。絶対とは言えないが、汗ぐらいであればしのげると言われている。
また、スクリューバックほどではないがスナップバックにパッキンがあるスナップ防水というのもある。このあたりなら神経質にならずとも使えるはずだ。ただし、いずれの裏ブタであったとしても真夏の屋外やスポーツには着用しないのが懸命である。
それでは最後に、ビギナーにもおすすめな防水仕様のアンティークウオッチを3本紹介したい。
オメガ/シーマスター
飽きのこないシンプルなデザインと防水仕様となった実用性の高さから、普段使いできるアンティークウオッチの筆頭として高い支持を得るのがオメガのシーマスターだ。製造数が多く、現在も比較的多く残っていることから、20万円台という値ごろな価格で狙えるモデルがあることも人気を集める理由。この個体は、当時クロノメーター認定を受けた自動巻きムーヴメントを搭載しており、精度に対する信頼性も高い。
■SS(34mm径)。自動巻き(Cal.564)。1960年代製。参考価格25万円
ロレックス/エアキング
ロレックスの入門機としても長く愛されたエアキング。当時のエアキングはクロノメーター認定こそ取得していなかったが、ロレックスが誇るオイスターケースを採用しており、優れた防水性能を有していた。この個体は、絹目模様の文字盤をもつ希少なエアキングデイト。
■Ref.5700。SS(34mm径)。自動巻き(Cal.1530)。1965年頃製。参考価格50万円
ランコ/バラクーダ
ケースメーカーのEPSA社が開発した防水ケース“スーパーコンプレッサー”を採用し、当時20気圧防水を実現したランコのバラクーダ。このコンプレッサーケースは、当時様々なブランドに供給され、数多くのダイバーズウオッチが生まれた。ロレックスを筆頭に人気の高いダイバーズウオッチは高額なモデルが多いが、こうしたマイナーブランドであれば比較的リーズナブルで手に入るモデルもある。
■SS(36mm径)。自動巻き(Cal.1146)。1960年代製。参考価格30万円
文◎堀内大輔(編集部)