ロレックス @kikuchiのいまどきの時計考

【ロレックス】通信 No.051|(後編)新型コロナ禍で激震が走ったスイス時計産業。ロレックスも秋には新作発表か!?

 前回は新型コロナ禍によって実勢価格が乱高下した日本のロレックス市場について取り上げたが、当然この猛威は日本だけでなくロレックスが本拠を構えるスイスの時計産業にも多大な影響を与えた。そこで、後編では3〜4月のスイス時計産業の大きな動きについて触れたいと思う。

 さて、毎年春に開かれる世界最大級の宝石と時計の見本市“バーゼルワールド”とリシュモングループが軸となり開催される“SIHH(今年からウオッチーズ&ワンダーズ ジュネーブに改名)”の2大時計の見本市は、今年も4月下旬の開催を予定していたのだが、新型コロナウイルスの拡散防止のために、これらも中止となった。

 つまり、スイス時計産業にとって新年度のスタートを切るうえで最も重要な時計見本市の予定を新型コロナウイルスはすべて吹き飛ばしてしまったのである。

 これらの見本市は、単に新作を発表する場というよりも、各国バイヤーとの新作モデル商談の場としての意味合いも強く、時計産業にとっては年に1度の重要なビッグイベントだ。そのため今回の中止がスイス時計産業界に与える影響は計り知れない。

 実のところ、そのひとつバーゼルワールドは当初、中止ではなく2021年1月に延期するとしていた。しかし、業界のある動きによってそれが中止せざるを得ない状況に追いやられたのである。

 そのある動きとは、2019年からすでにバーゼルワールドへの出展を取りやめているスウォッチグループ(オメガやブレゲなど)とともに、長年バーゼルワールドを支えてきた中心的ブランド、ロレックス(およびチューダー)、パテック フィリップ、ショパール、そしてLVMHグループ(タグ・ホイヤー、ウブロ、ゼニスなど)の通称ビッグファイブが、バーゼルワールドへの不参加を表明したからだ。

バーゼルワールの会場内にあるロレックスの巨大なブース

 しかも、各ブランドは21年に新たな見本市の独自開催まで発表するなど、3〜4月のわずか2カ月間に衝撃的な展開に発展したのだった。つまり、新型コロナ禍はスイス時計産業のある意味では象徴的なイベントであり、1917年(時計の見本市としては72年)から100年以上も続く歴史あるバーゼルワールドの存続自体すらも脅かしてしまったのである。そして、来年3月前後に実際に開催されるのかはいまだに不透明な状況だ。

 一方で、実は日本のロレックス市場に大きく影響を及ぼすと考えられる深刻な事態がもうひとつ起こっていた。それはスイスにあるロレックスの製造拠点、ジュネーブ、ビエンヌ、クリシエのすべての工場が新型コロナウイルスの影響で閉鎖されたことである。

 しかも当初3月17日からの10日間としていた工場閉鎖は、結果的にかなり長期に及んだ。つまりこの間というもの製造されなかったばかりか供給自体もストップしていたと考えられる。最近のスポーツモデルの高騰は、この影響もゼロではないだろう。

 さて、4月の段階で2020年新作モデルの発表を延期するとしていたロレックスだが、7月に入り9月1日に新作モデルの発表を行うのではないかという情報が海外の時計情報サイトに流れ始めている。わずか1モデルだが7月1日にはチューダーから新作が発売されるなど、確かにここにきて少し動きが出てきているように感じる。

 現在、当ロレックス通信で「モデルチェンジ候補」と題して連載しているように、今回の新作ではサブマリーナなどの人気モデルのモデルチェンジが期待されているだけに、その注目度はかなり高い。9月1日という情報が正しいかはわからないが、我々メディアとしてもぜひ早めに新作発表を行ってほしいものだ。

菊地 吉正 - KIKUCHI Yoshimasa

時計専門誌「パワーウオッチ」を筆頭に「ロービート」、「タイムギア」などの時計雑誌を次々に生み出す。現在、発行人兼総編集長として刊行数は年間20冊以上にのぼる。また、近年では、業界初の時計専門のクラウドファンディングサイト「WATCH Makers」を開設。さらには、アンティークウオッチのテイストを再現した自身の時計ブランド「OUTLINE(アウトライン)」のクリエイティブディレクターとしてオリジナル時計の企画・監修も手がける。

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