ドイツ時計 レビュー記事 @kikuchiのいまどきの時計考

勝手に実機でインプレッション【6回】小顔のドレス系ならコレで決まり

程よく小振りなサイズ感と
仕上げの美しさにひと目惚れ

 近年は40㎜アンダーの小振りな時計も各ブランドで見かけるようになってきた。手首が細い筆者にとってはありがたい傾向である。そこで今回のインプレッションでは、そんな小振りなものからモリッツ・グロスマンを取り上げたいと思う。

 そして選んだのがベヌー37。実は手前味噌ながら筆者自身が久し振りにひと目惚れをして手に入れた現行品なのである。2018年5月発行のパワーウオッチ「バーゼル特集号」の撮影用として編集部が借りてきていたのをスタジオで偶然に目にし、思わず気に入ってしまったという代物だ。

 どこが気に入ったかというと、クラシカルで落ち着いていて品のいい顔立ちももちろんだが、1番の決め手はこの37㎜径という小振りなサイズである。

 手首の細い方なら経験がおありだろう、サイズが大きいとラグと手首の間に隙間ができてしまいグラグラして着けたときの納まりが悪いうえに見た目もよろしくない。これまで数え切れないほどの時計を見てきたが、顔は気に入ってもサイズが…、ということが現行品に至っては、筆者の場合はそのほとんどがそうだった。どちらかというと現行品よりもアンティークなどひと昔前の小振りなものに目が向いてしまうのはそのためである。

 そんな筆者にとってこのベヌー37は、顔の雰囲気といい、サイズといいまさにドンピシャだったわけだ。ちなみにこの写真の時計、実は時針の形状が違う日本限定仕様(レギュラー仕様は下に掲載)。わずかな期間だけ販売されたもので現在は受け付けを終了している。ただ、この針自体はモリッツ・グロスマンが作っていることもあり、時間はかかるがオーダー自体はいまでも可能とのことだ。気になる人は問い合わせてみてはいかがだろう。

 搭載するムーヴメントは2015年に開発された同社初の小径薄型機、手巻きキャリバー102.0を刷新し、より堅牢性が高められた102.1。輪列もスタンダードな配置となり、スモールセコンドが7時から6時の正位置になったこともグッと魅力を高めた。

筆者は革ベルトにしてもブレスにしてもきっちりと締めるのを好む。その点37mmだとラグが手首の幅に納まるため、フェイスの位置が左右にズレたりせず見た目も良い。サイズ感はファッション的にもとても大切なことだと思うのである(私物)

独特な5分の3プレートに、グラスヒュッテストライプ、テンプ受けの繊細なエングレーブなど、その仕上げの美しさはつい見入ってしまうほどだ

ケースは下に向かってわずかに広がっているため、小振りサイズに加え重心が低いことも着けたときの安定感につながっている。厚さは9.2mm

モリッツ・グロスマンは針まで自製する。繊細さに加えてしなやかさが感じられるのはそのためだ。ブラウンバイオレットという色も高級感を醸す

べヌー37に限らずモリッツ・グロスマンの素晴らしさはその90%を自社で製造するムーヴメントを抜きに語れない。19世紀の古典設計を旨とする同社は、軸受けの石(ホワイトサファイア)を18金の輪で固定し、それを三つの青焼きビス(写真ではブルーがかって見えるがグロスマンの場合は、青ではなく時分針と同じブラウンバイオレット)で押さえるゴールドシャトン留めが施されている(画像の一部を意図的に消してます)。

繊細な模様のエングレーブがすべて手作業で施されれたテンプ受けとスッと伸びたグロスマン緩急針(写真上)、美しいサンバースト模様の角穴車(大型のもの)と黒く見えるほどに鏡面に磨かれたブラックポリッシュ仕上げの丸穴車(写真下)。19世紀当時のグラスヒュッテ様式に倣い美しい仕上げが細部にわたって施されている

 なお、下の写真が本来のレギュラーモデルである。繊細でしなやかにスッと伸びた美しいモリッツ・グロスマンを象徴する時針が採用されている。素材は18金ピンクゴールドとホワイトゴールドの2種類がラインナップする。ちなみにこの37mmモデルは、もともと日本からの提案で進められた企画だったが、急遽日本だけではなくワールドワイドでの展開に切り替わったというもの。つまり、それほど完成度が高かったということも言えるだろう。

(写真◎笠井 修/パワーウオッチ3月号・104号から転載)

INFORMATION
ブランド名:MORITZ GROSSMANN/モリッツ・グロスマン
型番:Ref.MG-001863
モデル名:ベヌー3I
ケース素材:K18ローズゴールド
サイズ:37㎜
防水性:日常生活防水
ムーヴメント:手巻き(Cal.102.1)
税込み価格:345万6000円
協力:モリッツ・グロスマン ブティック

 

 

菊地 吉正 - KIKUCHI Yoshimasa

時計専門誌「パワーウオッチ」を筆頭に「ロービート」、「タイムギア」などの時計雑誌を次々に生み出す。現在、発行人兼総編集長として刊行数は年間20冊以上にのぼる。また、近年では、業界初の時計専門のクラウドファンディングサイト「WATCH Makers」を開設。さらには、アンティークウオッチのテイストを再現した自身の時計ブランド「OUTLINE(アウトライン)」のクリエイティブディレクターとしてオリジナル時計の企画・監修も手がける。

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