“予算20万円台の良い時計が知りたい”という声がよく聞かれる。確かにこのプライスレンジは非常に現実味があり、全体的に高騰している昨今の時計市場においては、とてもありがたい存在と言えよう。さらに決して高級時計とは言えないが、現代の製造技術の進歩により、力の入った力作が多いこともまた事実である。そこで今回は、読者が最も気になる“予算20万円台”というプライスゾーンから、魅力的な時計を編集部員が徹底的レビュー。実機を眺めて、触って、試着したリアルな意見なので、ぜひ購入の際の参考にしていただければ幸いだ。
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今回のプライスゾーンでも数々の力作が
見つかったこのジャンルを一挙にご紹介!
注目のスポ顔&ミリ顔
ZODIAC ゾディアック
オリンポス ミリタリーリミテッドエディション
1960年代〜70年代にかけて人気を集めたゾディアックの変形時計“オリンポス”の復刻モデル。本作は182本だけ生産される限定版であり、源流になっているオリジナルモデルは、かつて英国軍用に開発されながらも最終的には制式採用まで至らなかった幻の軍用時計。さらに搭載するのはCOSC認定のクロノメーターだ。
■Ref.ZO9705。SS(40㎜径)。20気圧防水。自動巻き(Cal.STP3-13)。世界限定182本。今秋発売予定。12万6360円/問フォッシルジャパン(☎︎ 03-5992-4611)
あえて文字盤表面を荒らし、クラシック感を演出。この仕上げはオリンポスシリーズのなかでも限定版だけに採用される
アラビアインデックスと針には、雰囲気のあるグリーンの夜光塗料を採用。ご覧の通り、暗所でも抜群の視認性を誇る
こちらは回転ディスクで時間を示すミステリーダイアル仕様。もちろん、これもオリジナルに倣ったデザインだ。■オリンポスLE。RefZO9704。SS(37㎜径)。5気圧防水。自動巻き(Cal.STP3-13)。世界限定82本。13万5000円/問フォッシルジャパン(☎︎ 03-5992-4611)
実機でレビュー!
「幻の軍用時計を忠実に再現したという絶妙な古典顔が魅力。変形ケースですが、手首に載せてみると、驚くほどに納まりが良いです。また機能性を主眼に置く軍用時計にもかかわらず変形ケースを採用するという、70年代らしいアンバランスなデザインも時計好きのハートを揺さぶります。」
贅沢スペックなのに価格はリーズナブル
BALL WATCH ボール・ウォッチ
エンジニアⅢ カーボライト
自社ムーヴメントも開発しているスイスの実力派。本作は発表されたばかりの新作で、ケースには軽くて硬いカーボンを採用する。さらに搭載する自動巻きムーヴメントはCOCS 認定のクロノメーターだ。
■Ref.NM3026C-L2CJ-BK。カーボン(43㎜径)。10気圧防水。自動巻き(Cal.RR1103-C)。25万3800円/問ボール・ウォッチ ジャパン(☎︎ 03-3221-7807)
ボールウォッチの十八番、マイクロ・ガスライト。その明るさは従来の夜光塗料をはるかに凌駕する
実機でレビュー!
「かなりコストパフォーマンスの高いモデルだと感じます。理由はクロノメータームーヴメントを搭載していること、SSよりもお金がかかるカーボンケースだということ、そして実用性抜群のマイクロ・ガスライトを採用しているということです。それでいて価格は25万円台なので、戦略的なモデルと言えますね。」
世界初! 光発電の1000m飽和潜水用ダイバーズ
CITIZEN PROMASTER シチズン プロマスター
エコ・ドライブ プロフェッショナルダイバー 1000m
シチズンの技術力を集結させたハイスペックなエコ・ドライブダイバーズ。水深1000mでの水圧に耐えられる堅牢さを誇り、その屈強な見た目は男の冒険心を強烈に刺激する。ちなみにこの独創的なデザインは、巻き貝から着想を得たものだ。
■Ref.BN7020-09E。TI(デュラテクトDLC加工、52.5㎜径)。1000m飽和潜水用防水。光発電エコ・ドライブ(Cal.J210)。28万800円/問シチズンお客様時計相談室(☎︎ 0120-78-4807)
回転ベゼルには水中での誤操作・誤作動を防ぐ、ロック機構が装備されている
実機でレビュー!
「巻き貝をモチーフにしたケースの厚さは、およそ22.2㎜(!)。そのボリューム感はかなりのものなので、購入する際は、実機を見て試着してみることがマストです。一方、スペックの高さにロマンを見出す人にとってはこれ以上ない選択肢。さらにケース素材はチタンなので、見た目よりもだいぶ着けやすいです。」
一つひとつに個性がある天然MOP文字盤
Sinn ジン
556.I.Perlmutt.S
ジンのエントリーラインである“556シリーズ”。ソリッド感が際立つがっちりしたケースに、必要最小限のシンプル文字盤を合わせるという使い勝手の良いデザインが魅力だ。さらに本作はジンでは大変珍しいマザー・オブ・パールを採用していることも見逃せない。
■SS(38.5㎜径)。20気圧防水。自動巻き(Cal.ETA2824-2)。21万6000円/問ホッタ(☎︎ 03-6226-4715)
シースルーバックから鑑賞できるETAの自動巻きムーヴメント。ローターにはゴールド仕上げを施す
実機でレビュー!
「マザー・オブ・パール文字盤の輝きが控えめなのが良いですね。他ブランドの場合、ギラッとしすぎているものも多く、本音を言えば結構着けづらい。ただこのモデルはアクセント程度なので、大人のオシャレとして楽しめます。質実剛健なジンらしい仕上がりと言えますね。また、小振りながらも重厚感があるケースも魅力。」
お手頃だけど本格派。入門向けのミリ時計
STOWA ストーヴァ
フリーガー ウェールス
長い休眠時期を経て、1996年に復活を果たしたドイツの実力派ブランド。本作は新生ストーヴァの定番モデル“フリーガー”のエントリー版となっており、職人による装飾的な工程をいくつか減らすことで、魅力的なプライスを実現させた。
■SS(40㎜径)。5気圧防水。自動巻き(Cal.ETA2824-2 basic version)。10万8000円/問スピンドル新丸ビル店(☎︎ 03-3211-5117)
新生ストーヴァを率いるヨルク・シャウアー氏。ドイツを代表する凄腕の時計師で、同氏の美学がこのモデルにも凝縮されている
実機でレビュー!
「ストーヴァのなかではかなりお手頃ですが、決して実のない量産品ではありません。確かにいくつかの手作業工程を減らしていますが、ムーヴの精度調整やケースの仕上げなど、時計の品質を大きく左右する工程にはきっちりと時間をかけているんです。また、素材はほかのモデルと同じ高品質なものを使用しています。」
究極のタフネスモデルがオートマチックに!
VICTORINOX SWISS ARMY ビクトリノックス・スイスアーミー
イノックス メカニカル
イノックスは過酷な環境にも耐えうる、桁外れの耐久性が魅力。事実、開発に際して130種にも及ぶ徹底的な強度耐久テストを行っている。このモデルは今年誕生した新バリエーションで、シリーズ初の自動巻きムーヴメントを搭載していることが特徴だ。
■Ref.241834。SS(43㎜径)。200m防水。自動巻き。10月発売予定。11万3400円/問ビクトリノックス・ジャパン(☎︎ 03-3796-0951)
裏はスケルトン仕様。ローターの動きやテンプの鼓動など、メカモデルならではの醍醐味が味わえる
実機でレビュー!
「イノックスは腕時計の歴史上、最も過酷なテストをパスしたと言っても過言ではありません。正真正銘のタフ時計ですが、それだけでなく金属を叩いて成形する鍛造ケースにも注目。複雑な造形を採用していますが、一面一面が丁寧に磨かれており、その質感はまさに価格以上。厚みと重ささえ許容できれば、買い得な時計です。」
70年代モデルのリバイバルデザイン
ALPINA アルピナ
スタータイマー パイロット ヘリテージ オートマティックGMT
アルピナはスポーツウオッチの製造を得意とするスイスの本格派ブランドだ。このモデルは1970年に同社が生み出した、アラーム機能付きパイロットウオッチをリバイバルしたもの。復刻版ではアラーム機能を実用的なGMT機能へと変更している。
■Ref.AL-555LNS4H6。SS(42×40㎜サイズ)。6気圧防水。自動巻き。18万7920円/問アルピナ相談室(☎︎ 0570-03-1883)
上の時計が1970年のオリジナルモデルだ。ケース、文字盤の意匠はかなり再現されているのがわかる
実機でレビュー!
「価格以上の内容をもつ狙い目のひとつ。まず文字盤ですが、サンレイ仕上げがかなりキレイで、高級感はバッチリ。ブルーの色味も深みがあるため、決してカジュアルな雰囲気ではありません。ベセルとラグが一体となったケースはポリッシュとヘアラインを使い分けており、そのエッジ(角)もパキッと立っています。」
なお、過去に公開した記事は下にあります。
第1回「語れる3針時計」はコチラ
第2回「お手頃クロノ」はコチラ
第3回「使える多機能系」はコチラ