洋服にはこだわりがあり、小物使いにも積極的な円楽さん。「ブレスレットだといやらしいかな、という時も時計なら着けやすい。しかも時計部分がロレックスなら最高」とひと目惚れしたのがクロムハーツのカスタム品だ。手もとに落ち着くまでにすったもんだあったが、その分愛着は深い
ケースに5本並んだ色々なロレックスを見ながら、「この連中は本当に俺に迷惑かけてんだ」と呟く円楽さん。
「最初のロレックスはね、40歳くらいで経済的にも良くなってきた頃に、仲のいい友人たちと『ステイタスとは何だ』って話になり、やっぱり時計はロレックスだろって一緒に買ったんですよ。ところがハワイでホールドアップに遭って盗られちゃった。ちょうど42歳の厄年で、これは厄落としだ、命に代えたんだってことで買い直したのをいまも使ってるんです。クロムハーツのロレックスはハワイで買ったんだけど、帰国したら止まっちゃって。日本の店じゃ扱えないっていうからアメリカに修理に出したら、戻ってくるとき空港で関税を取られそうになるし、それを何とかクリアしたら今度はガラスがとれて行方不明になるわ…行ったり来たりで3カ月くらいかかったんじゃないかな?」
それでもロレックスは格別。流行のブランドとは違って「ステイタスとして間違いない」と感じるのだ。
「機械式だから止まることもあるけど、友人の医者の先生に『ロレックスをしてるやつは時間なんか気にしちゃいけない』なんて言われて、これは名言だと思ったね(笑)」
5本のなかにはその人に縁の1本もある。
「ある日一緒に飲んでたら、先生、自分で時計をしてるのに『いま何時?』って聞いてくる。『時計してるじゃないですか』って言ったら『字が小さくて見えねえんだよ』って(笑)。挙句『また今度会うとき時間聞くから、この時計を着けておいてくれ』と言われて預かることになっちゃった。だからその先生に会うときは、これ着けていかなきゃなんないの(笑)」
立場上、着物で過ごす時間が長いのかと思いきや着物姿は落語のときだけ。確かにバラエティー番組での円楽さんはいつも洋服姿だ。
「スーパーマン発想というか、着物を着るとスイッチが入って“変身”できる。大切なのはオンとオフの切り替え。時計の使い分けも同じだね」
スマートなスタイルからは意外だがもうすぐ65歳を迎える。
「この歳になって、志ん朝師匠も談志師匠もうちの師匠(5代目圓楽さん)も、うるさいことを言ってくれる世代は皆いなくなっちゃった。そのぶん落語界は自由にやってて面白いけれど、重しがない分、自分を律していかないと」
“老け込まず、カッコよく”というのはそんな師匠筋の教えでもある。恒例の“博多・天神落語まつり”では、自ら全国から落語家を集め、盛り上げ役に回る。目指すは“落語界のトータルコーディネイト”だ。
「手前のことだけやってりゃラクなんだけどね」―そんな責任感もまた、ロレックスの“ステイタス”が似合う理由なのかもしれない。
ENRAKU SANYUTEI 1950年2月8日、東京都生まれ。青山学院大学在学中に5代目三遊亭圓楽に弟子入りし、三遊亭楽太郎を名乗る。1977年に27歳で人気番組『笑点』のレギュラーとなり、1981年に真打昇進、2010年、6代目三遊亭円楽を襲名。東西落語界の交流にも力を入れていて、全国の落語家が一堂に会する“博多・天神落語まつり”もプロデュース。