芸能人の愛用時計

市村 正親 -男の肖像時計の選択(パワーウオッチVol.53)

白文字盤に革ベルトでかなり落ち着いた印象を醸している、ロレックスのデイトジャスト。ただし最近はあまり使っていないご様子

 

日本を代表する舞台俳優、市村正親さんの愛用の1本は、ロレックスのデイトジャスト。白文字盤、バーインデックス、フルーテッドベゼルに革ベルトという落ち着いた印象の逸品だ。

「92年初演の『ミス・サイゴン』って舞台でエンジニアという役を演じているんだけど、あの舞台ではロレックスの時計が重要な小道具として出てくるんだ。でも、実際にステージで使っている小道具はまったくのニセモノでね(笑)。それで自分でも本物が欲しくなったんです。これは当時の妻がプレゼントしてくれたもの。ロレックスはこれのほかにもう1本持っているけど、自分としては高価な時計に強いこだわりはない。去年から時代劇を撮影してるんだけど、そんなときは絶対に時計をしない。着替えるときに忘れちゃうことも多いからね」

そんなこともあって最近は時計をしないことも増えたそうだが、若い頃は必需品だったという。舞台という集団で作業を行う世界のなかで生きてきた人物だけに、時間に対しては非常に生真面目だ。

「今はケータイで済ませちゃうことも多いけど、若い頃は高価なものではなかったけど必ず時計をしていたよ。舞台芸術学院に入学したとき、恩師の八田元夫先生に『すべては定刻の10分前に』ってことを強く言われて、楽屋入りも舞台袖でスタンバイするのも、すべて10分前に済ませるってことをいまでも固く守っている。待ち合わせにも絶対遅れないんだよ。人を待たせてイライラするよりは、早めに行動して人を待っているくらいのほうがいいですね」

そんな生粋の舞台人である市村さんだが、俳優という仕事は、特殊な時間を感じることができるから楽しいのだという。

「舞台っていうのは面白いもので、せいぜい2〜3時間の芝居でも、そのなかには数日間、場合によっては数年間の時間が流れていたりする。もちろん映画やドラマでもそういうことはあるんだけど、舞台の場合は連続した時間のなかでそういうことが起こるから面白い。この夏に武田真治くんたちとやる『ロックンロール』って舞台では、1幕と2幕の間に20年という時間の隔たりがあるんだ。その間に僕は50歳から70歳に変化しなくてはならない。そういう意味では役者って絶対的な時間を超越した存在だし、普通の人とは異なった時間を生きることができるんだよね。そこがやっていて面白いところだね」

 

市村 正親俳優)
MASACHIKA ICHIMURA 1949年1月28日、埼玉県生まれ。1974年に劇団四季に入団。『エクウス』『エレファントマン』『キャッツ』『オペラ座の怪人』など多くの作品に出演し、四季を代表する看板俳優として活躍。1990年に退団した後も『ミス・サイゴン』などのミュージカル、舞台のほか、映画やテレビドラマでも活躍。日本を代表するミュージカル俳優としての功績が認められ、2007年には紫綬褒章を受章している。8月3日〜29日、世田谷パブリックシアターで開催される舞台『ロックンロール』への出演も話題を集めている。

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