女性編集者がレディースウオッチの新作を実際に見て、感想を交えて紹介する本企画。今回はHERMÈS(エルメス)から、2020年12月に発表された“アルソー ソレイユ”に注目しました。
【モデル紹介】
今回は、鐙(あぶみ)の象形から着想を得た、上下非対称なラグが特徴のメゾンを代表するコレクション“アルソー”を紹介します。鐙とは、古くから乗馬の際に、人間が足をかける道具として使われてきた馬具のこと。馬具工房として誕生したなんともエルメスらしいモチーフです。ちなみに“アルソー”とは“アーチ”を意味するフランス語です。
“アルソー”が誕生したのは1978年。エルメスの時計製造部門である“ラ・モントル・エルメス社”(現“エルメス・オルロジェ社”)の設立と同じ年に、デザイナーのアンリ・ドリニー氏によって誕生しました。
アンリ・ドリニー氏は、これまでカレやシルク、ネクタイなど様々な製品を生み出してきたエルメスと縁の深いデザイナーです。彼が手がけた“アルソー”は、エルメスを代表する時計コレクションといえます。
特徴的な放射状に輝く文字盤は、スイスのアーティスト、フレッド・ラヴィレールが手がけた、グラフィカルな太陽をモチーフにしたカレからインスピレーションを得たもの。太陽の光を思わせる繊細なグラデーションが、見事文字盤に表現されています。
また、特に注目してほしいのは、文字盤中央から伸びる放射状の線を、直線ではなくあえて曲線で彫り込んだ点。ラッカー仕上げの光沢感のある文字盤と相まって、グラデーションに上品な表情の変化を生み出しています。
【装着感は?】
丸みを帯びたラグなど、肌に接する部分が婉曲しているため、肌への当たりもソフトで着け心地は良好。
ケース径が36mmとレディース時計としては大きめですが、優しい装着感と軽やかな着け心地であるため腕なじみがよく、フィット感が高いため実寸よりも小振りに感じました。
【推しのポイント】
・あえて風防の上に配したダイヤモンドインデックス
グラデーションになったラッカー文字盤が目を引くアルソー ソレイユですが、もうひとつこだわりのディテールがあるのです。それが、風防の上にセッティングされたダイヤモンドのインデックス。一般的に、インデックスにダイヤモンドを用いる場合、文字盤に直接設置することが多いですが、本作はあえて風防にセッティング。ダイヤモンドの輝きがよりダイレクトに楽しめるように工夫されています。
また風防の上のダイヤモンドの粒が文字盤に影をつくり、魅力的な奥行きと光の効果を生み出すことにも成功しています。
馬具からインスピレーションを得るなど、歴史を大切にしながらも、革新的なアイデアを生み出すメゾンの姿勢はとても魅力的です。伝統と新しい発想を組み合わせたエルメスの腕時計。今後の新作の展開も見逃せません。
文◎佐波優紀(編集部)
【問い合わせ先】
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