かつて人気を博した90年代の時計たち! 【第10回|ヴァシュロン・コンスタンタン オーヴァーシーズ】

 今回はヴァシュロン・コンスタンタン(当時はバゼロン・コンスタンチンと呼ばれていた)からオーヴァーシーズを取り上げる。意外に思われるかもしれないが、いまやヴァシュロンの顔と言ってもいいほどのオーヴァーシーズだが実は初出が1996年と、まだ25年しか経っていない。

 このオーヴァーシーズだが、そのベースと位置付けられているのは創業222年を記念して77年にリリースされた、その名も222がそうだとする考えもあったが、ヴァシュロン・コンスタンタンの研究書『ヴァシュロン・コンスタンタンの神秘(フランコ・コローニ、ドミニク・フレション共著、2005年、フラマリオン社)』のなかでも言及されているが、直接的な原型となったのは、どうやら89年に発表されたフィディアスのようだ。

左がフィディアスのGMTワールドタイム。右が初代オーヴァーシーズ。よりスポーティーに進化していることがわかる。なお砲弾型インデックスのオーヴァーシーズは12時位置のロゴが扇状に配置されている

 フィディアスは90年代を見据えて、シンプルさとエレガントさ、そしてスポーティさも兼ね備えたモデルとして開発された。確かに初代オーヴァーシーズに見られるブレスレットデザインは、222というよりは背骨のような中コマを持つフィディアスに近い。しかしながら、全体の雰囲気からするとデザイン的には222に通ずるものがあることも否定できない。

 いずれにせよフィディアスをベースにより日常使いに即したスタイルに進化したオーヴァーシーズは高い評価を得たのだった。222に始まり、ラグジュアリースポーツの分野で試行錯誤を続けてきたヴァシュロン・コンスタンタンにとって、この成功はそれ以降の躍進につながる決定打となったことは確かだ。

極太のアラビア数字が採用された初代オーヴァーシーズ。12時位置のロゴが水平なのがわかる

 さて、初代のオーヴァーシーズは、37mm径のラージサイズ(Ref.42042)と35mm径のミディアムサイズ(Ref.42052)がある。なお、12時位置にあるロゴは、砲弾型インデックスの場合は扇状にデザインされているが、インデックスが極太のアラビア数字の場合は水平に配置されている。よって初代モデルを扇状のロゴかどうかだけで判断するのは間違い。

 ムーヴメントはジラール・ペルゴの3100をベースとするCal.1310を搭載。防水性能も150mと日常使いに申し分のない能力を備えていた。そして、ジャガー・ルクルト製889ベースのCal.1126SCの採用に加えて、軟鉄製耐磁ケースを新たに装備した第2世代が登場する2004年まで生産されたのだった。

初代オーヴァーシーズのフルゴールドモデル。ステンレススチールモデルに比べて流通数は極めて少なく、かなり貴重だ

 素材展開は上に掲載した写真のフルゴールドモデルとステンレススチールモデルの2種類のみ。2002年頃の実勢価格はステンレスモデルで60万円前後。現在はユーズドで70〜80万円台のようだ。

 一方のゴールドモデルは数が極めて少ない。にもかかわらず現在のユーズド実勢価格は200万円台前半ぐらいと言われており、やたらと高騰しているこのジャンルのモデルにしてはちょっと意外だった。軽軽に比較はできないが、オーヴァーシーズの翌年に登場したパテック フィリップのアクアノートの実勢価格を見てしまうと、どちらもかなりお買い得のように感じてしまう。

オーヴァーシーズ
■商品データ
型番:Ref.42042
生産終了年:2003年
素材:K18イエローゴールド
ケース径:37mm
防水性:150m防水
駆動方式:自動巻き(Cal.VC1310)
その他:日付け表示
当時の国内定価:SSは96万6000円、YGは312万9000円(2002年時点)

菊地 吉正 – KIKUCHI Yoshimasa

時計専門誌「パワーウオッチ」を筆頭に「ロービート」、「タイムギア」などの時計雑誌を次々に生み出す。現在、発行人兼総編集長として刊行数は年間20冊以上にのぼる。また、近年では、業界初の時計専門のクラウドファンディングサイト「WATCH Makers」を開設。さらには、アンティークウオッチのテイストを再現した自身の時計ブランド「OUTLINE(アウトライン)」のクリエイティブディレクターとしてオリジナル時計の企画・監修も手がける。

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