女性編集者がレディースウオッチの新作を実際に見て、感想を交えて紹介する本企画。今回はPATEK PHILIPPE(パテック フィリップ)のレディースライン“Twenty~4®(トゥエンティフォー)”の新作を紹介する。
世界三大時計ブランドに数えられるPATEK PHILIPPE(パテック フィリップ)は、創業から180年を超える老舗時計ブランド。コンプリケーション(複雑機構)をはじめ世界最高峰の技術力を発揮した時計を手がけ、世界中の時計愛好家を魅了してきた。
パテック フィリップといえばメンズウオッチのイメージを持つ人も多いとは思うが、実は創業以来、女性ユーザーにも重点を置いた時計づくりを行っている。1851年にヴィクトリア女王のために製作した青七宝の時計をはじめ、王侯貴族の依頼を受けて、女性向けの名品を数多く生み出しているのだ。
そうした女性ユーザーを重視する姿勢は現代にも形を変えて引き継がれている。象徴的なのが2009年発売のレディス・ファースト・クロノグラフだろう。
このモデルには開発に5年以上を費やしたパテック フィリップ初の完全自社製のクロノグラフムーヴメント(Cal.CH 29-535 PS)がメンズコレクションに先駆けて搭載されていたのだ。女性としてはとてもうれしいエピソードだが、当時はさぞかし多くの男性愛好家が羨ましく思ったに違いない。
【モデル紹介】
今回紹介するのは、1999年に登場以来、同ブランドを代表するレディースコレクションとして人気を博している“Twenty~4®︎(トゥエンティフォー)”の新作。24時間を意味するモデル名の通り、活動的な現代女性のために開発されたコレクションであり、ビジネスからカジュアルスタイルにまで着用できる、汎用性の高いデザインが魅力だ。
“Twenty~4®(トゥエンティフォー)”はこれまでクォーツモデルを中心に展開してきたのだが、今回の新作ではコレクション初となる自動巻きムーヴメント(Cal.324 S C)を採用。ムーヴメントだけでなく、ケースデザインに関しても、従来のスクエアケースではなく、初のラウンドケースが採用されている。
なぜ今回、これまでと異なるデザインを採用したのだろうか。気になってブランドの担当者に聞いてみると、5年もの月日をかけて顧客へヒアリングした結果、一番要望が多かったのがラウンドケースかつ自動巻きのモデルであったのだとか。
確かにパテック フィリップを持つなら、クォーツよりも機械式を選びたいという気持ちはとても分かる。
時計の品質の高さはもちろん、こうしたユーザーのニーズに柔軟に対応する姿勢も、パテック フィリップが世界最高峰の時計ブランドと評される理由のひとつなのだろう。
次に注目してほしいのがケースデザイン。一見シンプルに見えるケースだが、ここにも同ブランドの高度な加工技術を見ることができる。ケース、ベゼル、ラグと、パーツが別々に作られているのだ。
このセパレート構造のケースは、高度な技術を要する冷間鍛造にて成型した後、職人の手作業により研磨し、最終的にそれぞれのパーツをケースとして組み合わせるため、鍛造から研磨の段階まで寸分の誤差も許されない。
実は最初に見た時は、そうしたセパレート構造に全く気付かなかった。パーツの仕上げと組み上げのレベルがあまりにも高いので、一つのケースとして成型されているものだと思っていたのだ。
【装着感は?】
まず腕に乗せてみて驚いたのがフィット感の良さ。ラグ部分とコマの一つひとつが腕に沿うようにゆるくカーブしているため、このような密着度の高い装着感が実現しているのだろう。聞くとラグ部分は熟練の職人が手作業で磨き上げているとのこと。金属の美しさを引き出していることに加え、まるで腕に吸い付くような心地よい質感もこの高度な仕上げの賜物といえるだろう。
正直個人的には、着けていると窮屈に感じてブレスがあまり好きではないのだけれど、このモデルだとラグからコマまで腕を優しく包むようにコマがフィットして、とても着け心地が良かった。
良い時計は、搭載している機械が精密であることや、デザイン性だけでなく、着け心地にもこだわりが表れるものだと実感した。モデル名が示すように、これなら長時間着用していてもストレスを感じにくいことだろう。やっぱり世界トップレベルのブランドはデザインも技術もすごい。
【推しのポイント】
使いやすさを重視して作られたデザイン
ワンプッシュでバックルの折り畳みがスムーズにできる、特許取得のバックルを採用。Dバックルよりも力を使うことなく着脱ができるため、女性のために考えられた設計となっている。
アクティブな女性のためのモデル
新作モデルがイメージする女性像は“過去にあることを成し遂げ、新しい挑戦を続ける女性”。24時間どんな時間でもアクティブに輝く女性のために、視認性の高いアラビアインデックスやデイト表示を採用するなど、機能面が重視されている。
一方、ベゼルにジェム・セッティングのダイヤモンドを2列散りばめるなど、女性らしいラグジュアリーな意匠も取り入れている点も素敵だと思った。ちなみにこのダイヤモンドは、純白または透明の選び抜かれた“ピュア・トップウェッセルトン・ダイヤモンド”を使用している。
視認性や着用感に考慮したデザイン、そして華やかなダイヤモンドの装飾からも、年齢を問わずどんな時でも夢や目標に向かって邁進をするかっこ良い女性像が感じ取れた。
世の中にドレススタイルを見越したラグジュアリーなレディース時計は多くあるが、活動的な女性に向けた時計を、パテック フィリップほどのブランドが発表していることが、一人の女性としてもうれしかった。
気の遠くなる時間と高度な加工技術を費やして作られた本モデル。こんな時計が似合うかっこ良い女性に、私もいつかなれたら良いなと思う。
*スペック*
Twenty~4 オートマチック
7300/1200A
※ ステンレススチールケースのブラック・グラデーションのグレー・ソレイユ文字盤や、ローズゴールドケース・モデル、ローズゴールドケースとブレスにふんだんにダイヤモンドをあしらったハイジュエリーモデルもある。詳しくはブランドのホームページを確認してほしい
【ムーヴメント】
キャリバー324 S C 自動巻ムーヴメント
【サイズ】
36mm径、10.05mm厚
【部品総数】
217個
【石数】
29石
【連続駆動可能時間】
最小35時間、最大45時間
【巻き上げローター】
単方向巻上げ式21 金中央ローター
【振動数】
2万8800 振動(片道)/ 時(4 Hz)
【テンプ】
Gyromax®
【ヒゲゼンマイ】
Spiromax®(Silinvar®製)
【ヒゲ持ち】
可動式
【ケース】
ステンレススチール仕様、160個のピュア・トップウェッセルトン・ダイヤモンド付ベゼル(約0.77カラット)、サファイヤクリスタル・バック、防水リュウズ、3気圧防水
【文字盤】
ブルー・ソレイユ
18金ホワイトゴールドのスーパールミノヴァ夜光付植字数字とインデックス
18金ホワイトゴールドのダイヤモンド研磨バトン型スーパールミノヴァ夜光付時・分針Pfinodal (高性能銅合金)製ロジウム・プレート秒針
【ブレスレット】
ステンレススチール、特許取得の新しい折り畳み式バックル(技術特許EP3162241B1)独立した4つの止め金を備え、開閉の際の安全性を高め、いずれかの掛け金が不用意に開くことを防止
【価格】
313万5000円
【問い合わせ】
パテック フィリップ ホームページ
https://www.patek.com/ja/
文◎佐波優紀(編集部)