A.ランゲ&ゾーネ、ボーム&メルシエ、カルティエ、IWC、ジャガー・ルクルト、パネライなど、リシュモングルーブを中心に全11ブランドが出展する展示会“Watches & Wonders”が、本日より上海でスタートした。
この展示会で多くのブランドが新たな2020年モデルを披露しているが、なかでも筆者が気になったのはA.ランゲ&ゾーネから発表された“F. A.ランゲへのオマージュ”である。
本作は、ブランドの祖であるフェルディナント・アドルフ・ランゲがザクセンに時計産業を興して175年、さらに1990年のブランド再興から30年という節目を迎えたことを記念して製作されたアニバーサリーエディションだ。
A.ランゲ&ゾーネの伝統的側面を体現するプロダクトファミリーとして展開される“1815”をベースに3モデルが製作された。
3モデルに共通するのは、ケース素材にハニーゴールドが採用されている点である。
この素材は高い硬度と温かみある光沢が特長であり、同社が専用使用権を有するもの。ランゲでも特別なモデルのみでしか用いられることはなく、2010年の初採用以降わずか8モデルにしか採用されていない。
それを一度に3モデルも発表したのだから、同社にとってこのアニバーサリーがいかに重要なものであるかがうかがいしれる。
また特別なのは素材だけなく、ムーヴメントにも特別な仕上げ装飾が施されるほか、文字盤デザインにも趣向を凝らすなど、現時点のA.ランゲ&ゾーネにおける最高レベルの時計製造技術と工芸技術が投入されているのだ。
それでは本アニバーサリーエディションについて、一つひとつ紹介していきたい。
1815 ラトラパント・ハニーゴールド “F. A.ランゲへのオマージュ”
■Ref.425.050。K18ハニーゴールド(41.2mm径/12.6mm厚)。日常生活防水。手巻き(Cal.L101.2)。世界限定100本。ブティック限定。税抜予価1475万円(2020年11月発売予定)
筆者が早くも2020年のベストモデル筆頭として推したいのが、この1815 ラトラパント・ハニーゴールド “F. A.ランゲへのオマージュ”だ。
ハニーゴールドケースとシルバー無垢製ブラック文字盤を組み合わせたカラーコンビネーションに加え、緻密に描かれたスケールがなんとも魅力的な表情を生み出している。
ランゲとしては6作目のラトラパント・クロノグラフとなるが、この機構のみに特化したモデルは意外にも本作が初。機能を絞り込んだことで上品さと精悍さがより際立った印象である。
またこうした複雑モデルで装着感について言及するのはナンセンスなのかもしれないが、機能を絞ったことによりケースもスリム化(ケース径41.2mm、厚み12.6mm)した。
実際に日常的に使うかどうかは別としても、普段使いでも気にならない適度なサイズ感にまとめられた点は特筆だろう。
新たに開発された手巻きのCal.L101.2。表面に粒状の仕上げを施した受けとブラックロディウム仕上げのエングレービングがアニバーサリーエディションの特徴だ
トゥールボグラフ・パーペチュアル・ハニーゴールド “F. A.ランゲへのオマージュ”
■Ref.706.050FE。K18ハニーゴールド(43mm径/16.6mm厚)。日常生活防水。手巻き(Cal.L133.1)。世界限定50本。参考価格50万ユーロ(ドイツVAT19%含む/2020年11月発売予定)
続いて紹介するのは、5種類の複雑機構を同時に搭載したトゥールボグラフ・パーペチュアル “プール・ル・メリット”(2017年発表/1815ファミリーに属する)をハニーゴールドケースに収めたアリバーサリーエディションだ。搭載する複雑機構はチェーンフュジー機構、トゥールビヨン、クロノグラフ、ラトラパント、永久カレンダーの5つ。これを初めて1本の腕時計に集約させたモデルである。
これほどの複雑機ゆえ、搭載するCal.L133.1について語るべき点は多いが、今回はアリバーサリーエディションならではのポイントとして“文字盤”に着目したい。
ケースと同じ18Kハニーゴールド無垢製の文字盤は、ダークカラーを背景に、インデックスや目盛り、ロゴが浮彫りによって仕上げられている点が大きな特長だ。
このレリーフ彫りによって、文字盤はより立体的な印象に仕上がり、独特の表情を生み出している。
アプライド仕様は別体となったインデックスなどを文字盤に取り付けるのが一般的だが、本作では浮彫りによって文字盤から約0.15mm隆起させている
またブラックロディウム仕上げのムーンディスクもハニーゴールド製だ。手彫りによって描かれた星々が神秘的な雰囲気を醸し出している。
1815 フラッハ・ハニーゴールド “F. A.ランゲへのオマージュ”
■Ref.239.050。K18ハニーゴールド(38mm径/6.3mm厚)。日常生活防水。手巻き(Cal.L093.1)。世界限定175本。税抜予価374万円(2020年9月発売予定)
最後に取り上げるのは、薄型2針モデルのアニバーサリーエディションだ。
ランゲの薄型モデルとしては、2016年よりサクソニア・フラッハが展開されているが、今回はその1815バージョンが特別に製作されたのである。
上の2モデル同様にケースはハニーゴールド製。その直径は38mm、厚みはわずか6.3mmという薄型モデルだ。
手巻きのCal.L093.1の厚みはわずか2.9mm。この薄さで72時間ものパワーリザーブを実現している点も見逃せない
また特別な点はほかにもある。
かつてランゲが名声を誇った懐中時計を想起させるホワイトエナメルで仕上げたツーパーツ構成の文字盤が収められているのだ。
一方で、ここに記したアラビア数字やレイルウェイモチーフの分目盛りをダークグレーでプリントし、個性を与えている。
A.ランゲ&ゾーネは、ザクセンに時計産業が興って175周年という節目に、伝統的要素と革新的な工芸技術を見事に融合させた時計を製作し、ザクセン時計産業の原点をいまに伝えているのだ。
【問い合わせ先】
A.ランゲ&ゾーネ TEL:03-4461-8080
https://www.alange-soehne.com/ja/
文◎堀内大輔(編集部)